ハイ・ティ(私の貴重な体験)

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オーストラリアの友人たちは、一隻のボートを自宅に置き、あるいは、一台のキャンピングカーを所有して、レジャーを楽しんでいます。ちょっと、お金があれば、自宅にプールを作っていたりしますが、暖炉はあまり見かけません。多分、気候のせいだと思います。我が家の自慢はその暖炉があるということです。子供達が暖炉の火にうっとりしている姿を、この絵は描いています。


 初めて、オーストラリアに行った時のこと、ホームステイ先の家庭で、特異な経験をしたことを覚えています。
 ご主人は、TAFEという職業専門学校の教師、奥様は陸軍の事務官という家庭でした。
 お子さんは、高校生の女子と男子の二人です。
 
 その家で、今日は「イージー・ティ」なんだと言われました。
 週に一回、夕食をそれにするというのです。
 
 初めてのオーストラリアで、私は戸惑うことばかりでした。
 しかも、ホームステイです。
 昼間、学校に出かけて、引率する生徒たちの授業に立ち会いますが、取り立ててすることもないのです。生徒たちは、友人もできて、オーストラリアでの学校生活を楽しんでいます。
 夕方、と言っても、午後の3時ですが、私たちは生徒とともに学校を追い出されます。
 オーストラリア人の教師たちは、この後、仕事を家庭でするのです。
 宿題やテストの採点などです。
 部活動は、それを専門とするクラブが地域にあって、それをやりたい生徒がそこへいくのです。
 ですから、私は、何をすることもなく、6時間程度の学校での滞在を終えて、ブラブラと街中を歩いて、ホームステイ先に戻るのです。

 そして、水曜の午後、今日の夕食は「イージー・ティ」だと言われたのです。

 朝は、コーンフレークという生活は今では慣れていますが、当時は、朝食をしっかりととる生活をしていましたから、牛乳にコーンフレークという朝食はたいそうきつかったことを覚えています。
 昼は、サンドイッチを作ってくれて、それにリンゴを丸ごと一個を持たせてくれます。
 サンドイッチの中身は、ハムとチーズです。
 毎回、それです。

 そして、今日は「イージー・ティ」というわけです。

 その中身は、陸軍に勤務する奥さんが作ってくれたパンプキン・スープのみでした。
 まさか、これだけかと思いながら、ゆっくりとスプーンを口に運びます。
 もしかしたら、スープを飲み終わったら、チキンの丸焼きが出てくるのではないかとか、パンの一切れでも差し出されるのではないかと期待は膨らむのですが、一向にその気配はありません。
 家族の皆も、じっくりと味わいながら、濃いスープをスプーンを口に運んでは味わっています。

 そして、食事は終わりました。

 ホームステイすると、その土地に生活するいろいろなことがわかります。
 旅行とはまた違った経験ができて、それはそれなりに楽しいものです。

 こんなことを思い出したのは、「ハイ・ティ」なる言葉を新聞の記事に見つけたからなのです。
 それは英国の労働者階級の生活から生まれたというものです。
 北部イングランドと隣接するスコットランドで、労働者が家に帰ってくるなり、パンと紅茶、それに肉料理を食べて、労働の後の空腹を癒したことから始まったと記事には書いてありました。
 彼らはテーブルについて、祈りを捧げて食事をするのではなく、立ったまま食事をしたから、「ハイ・ティ」という言葉が生まれたともいうのです。

 きっと、ささっと食事して、仲間でどこかのパブに行っては、そこで、ビールを注文して、組合の話をしたり、与太話で盛り上がったのだと思うのです。
 記事には、英国人は、食事を意味する単語に「ティ」を用いることがあり、特に、労働者階級では、ティとディナーを独自に使い分けるとありましたので、それと知らない旅行者などは、時に混乱をすることがあるかと思います。

 その混乱した一人が、実は、私だったのかもしれません。

 オーストラリア人の多くは、イギリスからの移民の子孫です。
 身分制度が厳然として残る、堅苦しいイギリスから逃れてきて、それでも、根っこの部分ではイギリスの労働者階級の生活の在りようを伝えているのです。

 学校が午前中で終わりになった日、この日は、学校が何かの行事で使うので、そうなったのですが、私たちは、早々に学校を追い出されてしまいました。
 生徒たちは、それぞれのホームステイ先の親御さんが迎えにきて、さっと帰宅しました。
 私は、仕方がないので、サンドイッチを持って、町の中心部の方、ショッピングセンターの方へと歩いて行きました。

 そこで、見たのは、うら若き女性がカフェテラスで、ローストチキン丸ごと一羽にかぶりついている様子でした。
 周りを見回しても、皿に盛られた、相当な量のランチを食しているではないですか。

 私は、きっと、彼ら彼女らは、昨夜は「イージー・ティ」に違いないと思ったのです。
 
 一羽のチキンを食し、大きなピッザを頬張り、そうして、夜はスープ一杯で過ごすのです。
 当時の私には考えられない食生活です。

 一ヶ月あまりのオーストラリア滞在で、私は見事、ダイエットに成功したことは言うまでも在りません。

 それもこれも、今となっては、貴重な体験であったと思っているのです。


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《6/28  Wednesday》

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