世界一の忖度レベル

39q48ojskdnbcv567eahk
ビーチで走ると引く波に目が惑わされて、自分が思いの外早く走っている錯覚になります。その姿を描きました。ですから、この子に限らず、人はビーチでは下を見て走るというわけです。


 70年代のことです。
 ジョンレノンのLPレコード『Sometime In New York City』のジャケットを初めて見たとき、一瞬、ドキッとしたことを覚えています。
 
 このLPのジャケットデザインは、まさにアメリカの「新聞」そのものなのです。
 写真と記事。
 記事は、収められている曲の題名と歌詞となっています。
 そのLPジャケットの右上に紹介されていた<記事>は、『We're All Water』という珍奇な言葉の曲でした。歌っているのはジョンレノンではなく、ヨーコオノでした。

 There may not be much difference between Chairman Mao and Richard Nixon.
 If we strip them naked.

 毛沢東とニクソンにたいした違いはないかもよ。裸にしてごらんなさいよ。わかるから。というような意味合いになります。

 当時、中国は今のように<強国>ではありませんでした。
 しかし、世界が一目おく毛沢東というカリスマ指導者がいました。
 若い世代、革命を志す人々は、彼の革命哲学を学び、そこに理想を見ていたのです。
 
 アメリカが朝鮮戦争で原爆を落とすと脅したときも、あれは「張り子のトラだ」と言ってのけ、脅しに屈しなかったのが毛沢東です。
 あの時代の若者には、格好いい革命家であり、思想家であったのです。

 対して、アメリカの大統領はニクソンはといえば、これが評判悪い大統領で、あの民主党本部盗聴事件、一般にウォーターゲート事件と言われる一件で弾劾された大統領です。
 キッシンジャーという有能な補佐官がいなければ、歴史上最悪の大統領になっていたはずです。
 もっとも、トランプが出て来て、歴史上最悪という汚名は無くなるはずだとは思うのですが、電撃的な中国訪問、中東和平と、その後のソ連崩壊、社会主義体制の分断へと導く政治的決断は、今後再評価されていくことになると言うのが政治評論家たちの大方の見方ではあります。
 で、何故、ドキッとしたかということですが、その『We're All Water』という<記事>に添えられた写真なんです。

 『裸の毛沢東と裸のニクソンがダンスをしている』という写真だったのです。
 
 私は、この不謹慎な写真に、中国がいきりたち、このレコードにいちゃもんをつけてくるのではないかと思ったのです。
 そうでしょう、中国人にとっては、偉大にして、敬愛すべき国の最高指導者です。
 合成写真とはわかっていても、無礼であり、屈辱であると思うはずです。

 しかし、奇妙なことに、この写真は、むしろ、アメリカ国内でちょっとした波乱を起こし、中国ではさほどの事件としては取り上げられなかったのです。

 余談ではありますが、私が1978年に、香港の羅湖から深圳に入国した時、私の手元には一台のカセット付き携帯ラジオがありました。まだ、ソニーのウォークマンも、もちろん、iPhoneなどもない時代ですから、私は大きなカセットラジオをせっせと担いで持って行ったというわけです。かの地のラジオ放送をカセットテープに録音するためにです。
 で、その時、カセットに入っていたのがビートルズの曲でした。
 入国審査の時、そのカセットを審査官に聞かせたのです。
 曲は『I’m Down』です。 
 彼、顔をしかめ、もういいから早く消せと手で合図したました。
 
 きっと、中国人民に最初に、ビートルズの曲を聞かせたのは、何を隠そう私であるといつも自慢しているのです。

 それはさておき、当のアメリカでは、ちょっとした問題が起きていました。
 レコード店によっては、あの写真にシールを貼って売ったりしたと言います。
 自由の国、アメリカでも、それだけ衝撃的な写真だったということがわかります。
 一番、激怒したのは、当のニクソンであったと言います。
 以後、ジョンレノンはアメリカ当局から睨まれることになるのです。

 先だって、一人の女性ジャーナリストのしかめっ面が話題になりました。
 記者会見で、中国政府に寄り添うかのような、お決まりの質問をした記者に対して、呆れるわ、あなた何をつまらないこと言っているの、と言うかのように顔をしかめた女性記者です。

 その後、どうなったのか、お咎めがあったのか、それとも、出入り禁止になったのか、その後のことは何も表に出てきませんからわかりませんが、こんな記事が今日の新聞には出ていました。
 聖書を自由に買えなくなっている、と言うのです。
 確か、バチカンと仲直りするような記事を読んでいたので、どうしてだろうと記事を読んで見ますと、「国外の勢力が、宗教を使って、中国に侵入しようとしているのを食い止めるためだ」と言うのです。
 なんだか、豊臣秀吉の時代の話ではないかと開いた口が塞がらないでいるのです。

 そういえば、習近平とオバマが並んで歩く写真、そして、我が国の首相とお互いに仏頂面で握手した写真を、<クマのプーさん>を習近平、<虎のティガー>がオバマ、<ロバのイーヨー>が日本の首相であるとする、そんな揶揄した写真も出回りました。

 これを作り、ネットで発信したのは、日本人でもアメリカ人でもなく、当の中国人民です。
 お人好しで、間抜けなプーさん、虎は王者です。ロバの目は下がり、本当に首相の顔によく似ています。
 ディズニーを真似たり、日本のキャラクターを真似て、それも無断で営業活動に使う企業体に比べれば、この名もなき中国人民のセンスは卓越しています。

 ところが、中国政府が、かつての毛沢東の一件のように、何もしなければ、なんと言うこともないことが、躍起になって潰しにかかったのですから滑稽です。
 それも人海戦術で、ネットの隅々まで、クマのプーさんを排除したのですから目立ちます。
 そうなると、こりゃ面白いと話を盛り上げるのが、アメリカの新聞です。
 かくして、クマのプーさんは、一躍、中国政府に対する批判の最前線に立つことになったのです。
 もちろん、オバマも日本の首相も、けしからんなどと文句を言ってはいません。おおらかに、よく似ているねと大上段に構えているのですから、立派なものです。
 日本では、忖度なる言葉が問題になっていますが、中国の官僚たちも、忖度では世界一のレベルにあると言えるのではないかと思っているのです。




コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

nkgwhiro

Author:nkgwhiro
ご訪問
ありがとうございます。

《 9/21 🎂 Friday 》
 
🦅本日、<Puboo!>にて、『nkgwhiro短編作品集「ある夏の五つの物語」』を発信しました。今回は有料作品となります。五つの物語のうち、一つを読めるように設定してあります。ぜひ、お目を通してくださればと思います。

<15.304字 400字詰原稿用紙38枚                            夏は、物語するにもっとも良い季節です。
開け放たれた扉の向こうから、異人たちも遊びにきてくれます。出かけた先でも、異人たちは向こうからやってきてくれます。
そんな異人たちとの出会いを綴った「nkgwhiro短編作品集」です。>

下の[リンク]欄からアクセスして読むことができます。

❣️<Twitter>では、『ものかき』として、朝と晩『つくばの街であれこれ』の更新情報をつぶやいています。下の[リンク]欄からアクセスができます。

⏬下の[リンク]欄から、歴史小説『一門』『福明と李福』、旅行記『ポーツマスの旅』、また、<水彩画>など、<nkgwhiro>の創作活動にアクセスができます。  

皆様のアクセスを心よりお待ちしております。🙋‍♂️

リンク
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
フリーエリア