茂名南路での白昼夢

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つくばには大きな公園がいくつかあります。ここは病院の隣にある公園。そこの池での自由な鳥と囲われた池でしか行きられない鯉の対照的な姿なのです。



 上海の<淮南中路>は、おしゃれな通りです。

 歩道はさほど広くはないのですが、プラタナスの並木には風情があります。通りから横丁に入った小路も洒落た風情が漂っています。この辺りを歩いていると、ここに暮らしているのは果たして本当に中国人かしらと思うときがあるのです。

 <淮南中路>の通り沿いに映画館「国泰电影院」の建物があります。
 そこの横丁に歩を進めます。<茂名南路>という小路です。

 左手に「淮茂緑地」の広い空間が目に入って来ます。
 私は<茂名南路>の右側の歩道を歩いています。
 夜など、道を歩いていると、「女いるよ」と中国語訛りの日本語で、小声でささやく怪しげな男たちが歩く通りです。

 それもそのはずです。
 「淮茂緑地」の先に高いビルがあります。それが日式のホテル「花園飯店」です。
 そこは、上海を旅する日本人が安心して泊まれるホテルなのです。
 だから、あの様ないかがわしい男たちが夜な夜な歩き回るのです。

 歩き回るからには、需要があるのかしらと、ふと思いました。
 そんな危険なところに行く日本人もいるからこそあの様な男たちが出現するんだと思うと、情けなくなるのです。
 
 私は、朝、ホテルを出て、ホテルの北にある<长乐路>に出て西行し、<陝西南路>に出て南下、そして、<淮南中路>に出て、<茂名南路>に戻るというコースを散歩することを常としています。

 ただ、歩くだけではないのです。
 ホテルの贅沢な朝食もいいですが、かつてフランス租界があったこの辺りの建物、街の風情をゆっくりと楽しみたいのが一つ、そして、もう一つが、街のちょっとした店で上海人が食べる朝食をいただくことです。 
 いつも<长乐路>から<陝西南路>に入ったところにある店に立ち寄ります。
 そこで、揚げたての「油条」を買い、「煎餅」という緑豆の粉でしっとりと焼いただけの、何も入っていないものを買います。
 これが美味しいのです。歩きながら食べたり、公園のベンチで食べたりするのです。
 
 朝の散歩の帰り道、私は<茂名南路>の今度は左側の歩道を歩きながら、「淮茂緑地」の広大な空間から吹いてくる風を楽しみます。「花園飯店」のある反対側にはもう一つのホテルがあります。
 それが「錦江飯店」です。

 古き良き時代の上海を代表するレトロなゴシック様式の建物は風格に満ちています。
 租界のあった時代の記念物としても名を残すホテルですが、新中国になってからも、このホテルは中国の現代史の舞台となったところなのです。
 
 もともと欧米人が上海で暮らすために作られたマンションである「錦江飯店」ですが、新中国になって、このホテルを随分と気に入った大物がいました。

 毛沢東国家主席です。

 彼が上海に来たときには、必ず宿泊したのがこの「錦江飯店」です。
 彼は、このホテルで自分が主宰する会議を催すために、一つの会議場を作ること命じました。
 これが「錦江小礼堂」というものです。

 「小礼堂」は、中国の改革開放の端緒となる建物になるのです。

 1972年2月27日のことです。
 「小礼堂」で、ニクソン訪中最終日に、いわゆる<上海コミュニケ>なるものがここで発表されたのです。

 米中関係の正常化を図ること、両国はアジア・太平洋地域での覇権を求めないこと、台湾は中国の一部とすることに米国は異議を求めないこと、米国は日本が台湾に進出をさせないようにすること、そして、台湾への武力奪還を中国はしないことが発表されたのです。
 
 しかし、今、どうでしょう。
 中国はアジア・太平洋地域で覇権を唱えています。アメリカは台湾渡航法を定め、台湾への公的な接近を試みています。台湾も独立を標榜する勢力が力を持ちつつあります。中国は台湾海峡に遼寧艦隊を覇権し、大規模な演習を行いました。
 でも、そんなことは政治の世界ではさしたることではないのです。

 問題は、<複雑怪奇>なる国際情勢の揺らぎにあるのです。

 こんなことがありました。
 ソ連に対抗するため、ドイツとの関係強化をしようとしていた日本ですが、1939年8月23日に、ヒトラーは、突然ソビエト連邦と<独ソ不可侵条約>を締結してしまったのです。
 当時の首相は、平沼騏一郎です。
 8月28日、平沼は「今回帰結せられたる独ソ不侵略条約に依り、欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたので、我が方は之に鑑み従来準備し来った政策は之を打切り、更に別途の政策樹立を必要とするに至り」と声明を出して、内閣総辞職をしたのです。

 1972年の時も、ニクソンは対中外交の動きを日本には通知してきませんでした。
 日本は、これを「ニクソン・ショック」と呼んで、日米同盟の絆の弱さに恐れをなしたのです。

 はて、今、国際情勢において、活発にして<複雑怪奇なる>動きが生起しつつあります。
 
 私は、早朝の上海、<茂名南路>の左側の歩道を歩きながら、左手前方ある日式の「花園飯店」を垣間見、右手に「錦江飯店」を見て、よくもまあ、こんな横丁に、日中の代表的なホテルがあったものだと思ったものです。

 道幅がこんなに狭い、こんなに近いところに、日中を代表する二つのホテルはそれぞれに素晴らしいサービスと歴史を刻んているのに、その二つの国は、果てしない大河に遮られているようだと思い、朝の散歩の最後の道筋に入ったのでした。
 
 日本の首相は、アメリカの大統領に会いたいと思えば会える関係を構築していますが、複雑怪奇にも、『トランプ・ショック』が起こらないとは誰にも言えません。

 そんなことを思うと、これから数ヶ月の国際情勢は、未来の世界の流れを決める瞬間点をいくつか通過すると思っているのです。
 <茂名南路>で、かつて私が見た白昼夢は、きっと、このことなのかしらと思ったりもしているのです。




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