あのような一枚の写真

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夕方、西に太陽が沈みます。その瞬間、樹木も、鳥たちも、一瞬、動きを止めるのです。そんな瞬間があるんです。


 とある国の、とある人民会議。

 壇上に、政権のお歴々が並びます。
 中央には、最高権力者が位置し、鷹揚に手を振り、集まった人民の代表者を睥睨します。ふと、見ると、壇上の奥の壁には、最高権力者の父親と祖父の肖像が掲げられています。

 独裁国家というのはどうしてこうなのだろうかと思うときがあるのです。

 みかん箱の上に立って、自分の意見を開陳するところから民主主義は始まりました。
 みかん箱が大切なのではなく、その場にあって、自分の意見を述べる自由、それを聞く耳を持ち、反論する自由があることが大切であり、かつ、素晴らしいのです。
 でも、そうした国であっても、最初は、時の権力者から弾圧を受けたことは事実であり、それをはねのけた勇者がいたことを私たちは知るのです。

 しかし、独裁の国は、そうではないのです。

 自分たちが国を仕切り、自分たちが人民のすべてを保証し、そのためにここにいることを知らしめるには、みかん箱ではダメなのです。
 歌舞伎座ほどではないまでも、横に長い広い舞台が必要であり、そこにひな壇がしつらえられ、中央から順次階級の上下が示されなければならないのです。
 最も人が平等であることを標榜する主義であるはずの体制が、階級を堅持し、権威ある会議場を用意するのです。
 
 もし、とある国の、とある人民会議が、どこか公園の噴水の前で、みかん箱を使ってなされたら、それは人民による、人民のための、人民による政治がなされていると、誰もが羨ましく思うはずです。
 しかし、人民を国の名に持つ体制下では、いまだにそれを実現させた国はありません。
 
 とある国の、「核心」と自分を呼ばせる独裁者は、自分と国家を愚弄するネットのありようを徹底的に監視することを公言してはばかりません。
 自分を愚弄する凶々しい言葉があると、それを潰していきます。
 根気のいる仕事です。何万人という人間が駆り出されています。
 最先端のネット環境は、それゆえ、それに近い言葉をネットに出回る前に検索できないようにするシステムを構築し、作業の効率化を測るのです。
 そのうち、自分に都合の悪いことは、実際はなかったのだとすることでしょう。

 独裁とは、自分と意見を異にする輩が同じ空気を吸うことを忌み嫌う体制なのです。

 人間の耳は、どの耳も、心地よい言葉を好みます。
 己に向けられる批判、中傷、揶揄といった文言は聞き捨てならない悪魔のささやきに聞こえるのです。
 自分の耳に心地よい言葉は、それこそ天使のささやきとなるのです。

 だから、自分に心地よい言葉を発する人間は取り上げられ、そうでない人間は階級闘争という伝家の宝刀で切り捨てられるのです。
 時には、銃殺、時には、労働改造。
 また、ある時には、失脚、そして、歴史の表舞台から遠ざかるのです。

 先だって、CNNで一枚の写真を見ました。

 そこに写っていたのは、現職の大統領夫人、前大統領と夫人、その前、さらにその前と、歴代大統領の夫妻が一堂に会した写真です。おそらく、現職の大統領は職務に精励し、忙しくしていたのでしょう。欠席をしていました。

 バーバラ・ブッシュの死を悼んで、集った際の写真です。
 
 世界最高の権力を手にして、与えられた時間を精一杯勤め上げた誇りに満ちた表情をそこに見て取ることができるのです。
 そこにこんな記事が寄せられていました。

 写真に写っているそれぞれの大統領の行動に、私は政治的に賛成できなかった。
 しかし、彼らが一人残らず、自己愛ではなく、国を愛する心を本質的価値観として行動したことを、一度も疑わなかったと。

 クリントンと息子ブッシュの情報当局高官だったデービッド・プライスの言葉です。
 
 独裁を行う人間と、その体制と、ここが違うところだとハッとしたのです。
 意見は異なっても、相手に敬意を表する。たったそれだけのことなのですが、そこに大きな違いがあるのです。
 
 一枚の写真はすべてを語るということです。

 そういえば、とある国の、とある写真には、数ヶ月前に写っていた人物がいなくなると言うことがしばしば起こります。
 そうまでして、人を貶めるのです。
 
 はて、日本はと、そっと伺ってみると、反対政党は大いに政権を批判し、新聞もテレビも口さがありません。時には、同じ党からも批判が向けられます。
 実に健全ではあります。

 ただ、あのような一枚の写真を見られるようになれば、もっと素晴らしいと思っているのです。




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