不思議な郷愁

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近くの大学に、植物園というか、学業に供するためのそれらしきものがあります。時折、散歩がてらに出かけます。そこに流れとちょっとした滝があり、せせらぎを作っています。水の音はなんと心地よいのかとしばし佇むところなのです。


 「郷愁」という言葉が的確かどうかは、正直、わからないのです。
 
 ロンドンのウエストミンスター橋をビックベンを背にして歩き、小道をいくつかさらに東に抜けていくと、突然二本の巨大な砲身が周辺を威圧する光景に出くわします。
 <Imperial War Museum>、すなわち、「帝国戦争博物館」です。

 中に入ると、対独戦勝利、グレートブリテンの栄光が満ち満ちています。
 ナチスの侵攻で、フランスを支援していたイギリスは追い詰められます。それまでなかった「電撃戦」による圧倒的な航空火力と戦車機動力の前になすすべを失ったのです。
 イギリス軍は、フランス・ベルギー国境に近いフランス最北端の街、ダンケルクまで追い詰められます。これより先は海です。
 もう、退却する余地はないのです。

 しかし、イギリス人は「玉砕」を潔しとはしません。
 
 チャーチルは、ダンケルクに追い詰められたイギリス兵とフランス兵の救出を軍に命じます。
 ダンケルクからイギリス本土までわずかの距離です。動員された船は、軍の船だけではありませんでした。
 漁船も、ヨットも、ボートも、はしけも、海に浮かび動く船という船を動員したのです。
 ドイツ軍は、電撃戦で欧州を転戦し疲労困憊の戦車部隊を待機させ動かしませんでした。ゲーリングの空軍だけがダンケルクの浜辺に爆弾を落としますが、爆弾は砂浜に刺さり、大きな損害を与えることはできませんでした。
 ついに、35万人の兵士たちがイギリスにたどり着いたのです。
 なんともイギリス国民を感動させる作戦でありました。

 イギリス上空を舞台にした<バトル・オブ・ブリテン>を誇らしげに讃えていたのは、ケンブリッジ郊外にあるダックスフォード帝国戦争博物館 <Imperial War Museum Duxford>でした。
 
 何を隠そうダックスフォードこそがバトル・オブ・ブリテンの基地の一つであったのです。
 いまも、飛行場には観光客を乗せる複葉機が空を飛んでいます。いくつもあるとてつもない大きな格納庫には、勝利の栄光である航空機が展示されています。

 1940年7月10日のことです。
 イギリス本土上空に、占領したフランスの基地からドイツ空軍の爆撃機が飛来しました。
 驚いたことに、上空には、イギリス空軍のスピットファイアとハリケーンが編隊を組んで、待ち構えていました。
 フランスの基地からドイツも70機の戦闘機を飛ばしました。
 以来、四ヶ月に渡り、世界で初の航空機だけによる戦争が行われたのです。

 私は、車で、この近くのドライブインに立ち寄りました。 
 ちょうど、7月の終わりころでした。ドライブインでは、バトル・オブ・ブリテンを記念しての映像が流され、記念の品が売られていました。

 イギリスに滞在して、軍事博物館に出向き、ドライブインでこうした出来事に出くわしますと、この国は戦争に勝った国なのだなと心底痛感するのです。

 戦争に勝った国があれば負けた国があり、敵に占領され国土を蹂躙された国もあるはずです。
 
 日本はドイツとともに負けた国に位置します。
 フランスや中国は、敵国ドイツ、日本に占領され、国土を蹂躙された部類に入ります。
 
 負けた国は、殊の外「平和」を博物館に冠します。
 もう戦争はたくさんだ。平和が何よりだという思いが強く出てくるのです。
 占領された国では、様相が別れます。
 過去のことは水に流そう、自分たちだって、同じようなことをしてきた過去がある。それよりも未来をみようとするフランスのような国と、中国のように徹底して反日思想を植え付け、敵愾心を植え付ける国です。

 それは、でも、仕方のないことです。
 なんやかやと、日本がいうことではありません。

 <Imperial War Museum>でも、<Imperial War Museum Duxford>でもそうでした。
 私はそこに立って、薄暗い展示物のそばで、ちょっとした幻想を見たのでした。
 それは、日本が戦争をしていなかったらというものです。

 戦争に勝っていたらではありません。しなかったらという幻想です。
 
 日本の国土は、北は樺太でロシアと接し、それに千島列島でアメリカと接するのです。
 南は、東シナ海までいまと同じ諸島が続きます。 
 そして、朝鮮半島も台湾も、彼らに日本の影響下にあるのがいいのかどうかを問います。日本から離れたいというのであればそうすればいいのです。ただし、だからと言って、なんの交流もしないと突き放すことはしません。対等に貿易をし、平等に敬意を持って対します。
 もちろん、中国からも軍を引きます。
 南洋諸島は国際組織が委任統治を認め続ければ、南洋庁の管轄下で支援を続行します。

 当時の日本の政府がそんなことをしていたらと、幻想を見るのです。

 短気な軍人ではなく、悠長な古くからの日本の思想、自然に合致したあり方を求め、自然に敬意を払う姿勢を、政治家も、日本人も取っていたら、世界はどうなっていたのだろうかと、日本はどうなっていたのであろうかと、はるかかなたに夕陽を見るような不思議な郷愁が沸き起こってくるのです。




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嬉しいお言葉です

nannoさん

GW、いかがお過ごしですか。お褒めのお言葉をとても嬉しく読ませていただきました。
これからも、つまらぬ文章ですが、読んでいただければと思います。

No title

「郷愁」という言葉が何処に出てくるのかと思っていたら、最後に。上手い文章です。唸りました。「郷愁」という言葉のセンスも素晴らしいと思います。デジャブのような・・・
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nkgwhiro

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《 11/13 🍁 Tuesday 》
 
🦅ただいま、<Puboo!>にて、『一万年の憂愁』を発信しています。

<時の感覚というのは、実に不思議です。
縄文と弥生の人々が共存して、互いに文化を交流させている姿を思うことも、時には争いに発展することも、私は、想像をするのです。
さらには、世代間の違いにも思いをいたしたり、文化を異にする外国の地で、思いにふけったりもするのです。
人間なんて、人類の歴史から見れば、この世で活動する期間などわずかなものにすぎません。
しかし、そのわずかな時間でさえ、永遠に記録に残すことも可能なのです。
今回の作品はそうした意図を反映した作品なのです。>

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