コンビニエントな朝ごはん

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対岸のともしびというのは郷愁を感じます。何かが向こうにあるのではないか。ここよりももっと幸福な何かがあるのではないかとそんな思いにもさせてくれるからでしょう。その典型が、ホテルです。窓から見える光景も、きっと、宿泊料に入っているに違いありません。


 今朝は何を食べようかと思案するときがたまにあるんです。

 連休中にも、そんな朝の1日がありました。雨風の強い朝の日でした。
 そんな時、私は、戸棚から半年前、いやもっと前ですか、ゴールドコーストでチョイ住みしたときに食べていた「クリスピー」という麦とナッツ、それに、ドライブルーベリーが入った箱を取り出して、ミルクを注いで食べるのです。
 鳥の餌だという人もいるのですが、でも、私はこれが好きなのです。
 いろいろな味を楽しめ、歯ごたえもいく種類かあって、それも楽しめますから。

 思い出すことがあります。
 随分と昔の話です。

 オーストラリアのアデレイドのウエブスターさんのお宅にホームステイをしたときのことです。私は初めてコーンフレークなるものを器に入れて、そこにミルクをかけて食べたのです。
 そのようなものがあることはわかっていましたが、実際に食べるのは初めてのことでした。
 その当時、私を含めて、多くの日本人は、ご飯に味噌汁、それに納豆か生卵、時たま、アジの干物を焼いたものを朝食として食べていた頃のことです。
 それが、自分であの大きな箱の中のビニール袋に入った黄色い菓子のような物体を器に入れて、ミルクを注ぎ込みスプーンで食べるのです。
 遠慮もあって、少なめにコーンフレークを入れて、えらく腹をすかせたことも思い出されます。
 ウエブスター家では、これだけの朝食です。実にあっさりとしたものです。
 朝食の準備も後片付けも、日本の朝食に比べれば簡便にすぎるくらいのことです。

 今は、ゴールドコーストに到着して、身を落ち着けると、すぐに、<COLES>に出かけ、桃、パンプキンブレッド、コーヒー豆を微細に挽いたもの、そして、このクリスピーを買うのです。なにせ、一ヶ月ほどここで生活をするのですから。しかも、つくばにいる時と同じように。

 桃は、私の大好物です。日本では高くてできませんが、ここでは桃を丸かじりができます。
 パンプキンパンは、パンプキンスープを練りこんだ生地で焼いたもので、これも私の大好物です。さほど高くない、いや日本の食パンに比べると随分と安いパンであると思います。
 そして、欠かせないのがコーヒーです。これがないとにっちもさっちも行きません。
 さらに、朝食用にクリスピーと高脂肪のミルクを買うのです。

 この買い物が、またここにやってきたなと、そして、しばらくは違った環境の中でチョイ住みできるんだと実感できる場でもあるのです。

 だいたい、イギリス系の人々の食生活は質素です。
 ですから、アデレイドでの一ヶ月ほどの生活で、私はげっそりと痩せて帰ってきて、周りから病気ではないかと言われるくらいだったのです。帰国して、一週間もしないうちに、元どおりになりましたから、太る体質の私には、アデレイドで体験した食事は、以来、太り過ぎを予防する食事の典型になったのです。

 イギリス系の食事は質素と書きましたが、私たち日本人もそうですが、特別の日の、例えば休暇でホテルに泊まったりしたとき、この島国で生まれ育った二つの国の人間たちは、朝の食事に随分と手間暇をかけたものをいただくのです。
 それはカナダに行ったときのことです。
 レイク・ルイーズのそばにあるホテル、その名もレイクルイーズホテルでの朝食では、典型的なイングリッシュ・ブレックファーストが提供されました。
 あのカリカリに焼いたベーコンに、ちょっとしょっぱいソーセージ、半熟の卵焼き、どれも二個がセットです。加えて、焼いたポテトに、煮豆がつきます。
 それをウエイターの給仕で食べるのです。
 外はまだ暗く、ウエイターにこんな朝早くから大変だと言いますと、丁寧に、みなさんが良いご旅行をしていただけるためですと泣けてくるようなことを言うのです。
 なんでも、大学生で、アルバイトでこのホテルで働いてるカナダ人でした。
 私たちは、早朝、夜も明けやらぬレイクルイーズを後にして、途中、昇ってきた朝日に照り輝くカナディアンロッキーの山並に感動しながら、カルガリーに向かって行ったのです。

 それは、大英博物館のそばにある私が常宿していたロンドンのラスキンホテルでも同様でした。せせこましい街中にあるホテルで、大した星もないホテルですが、便のいいことはこの上ありません。
 ここでも、ビジネスマンたちが、あのイングリッシュ・ブレックファーストを優雅に食して、ビジネスに出かけて行くのです。
 私はといえば、朝食後、コヴェントガーデンまでの散歩を楽しみ、ゆっくりとロンドンの朝を過ごしますから、いい時代ではありました。

 さて、雨風の強い朝、私は笠間焼の器に、ゴールドコーストで買ってきたクレスピーを40gを入れて、ミルクを注ぎ、叩きつける雨音と不気味に唸る風の音を、まるでステレオサウンドを聞くようにして、美味しくいただいたのです。

 給仕もいません。
 隣にドイツ語の新聞を広げて読んでいるビジネスマンもいません。
 たった一人で、それをいただいたのです。

 そんなGWのとある朝の、コンビニエントな食事ではありました。




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そして、自らの、他者に影響されない、あるいは、政治的に作用されない、自分だけの風を見出すことにつながっていくことにも気づくのです。
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