柳の木の下で

344440kdanf64hsa
子供というのは一つのことに夢中になります。これは笠間の公園でトランポリンで跳ね上がる子供の姿を描いたものです。必死の表情が面白いです。


 私がよく行くホームセンターがあります。
 その店の隣の公園、遊具も綺麗なトイレも設置されているのですが、めったに子供の遊ぶ姿を見ることがないのです。

 つくばの街には、さまざまな公園があります。

 洞峰公園などと言う大きな公園ばかりではなく、街の片隅に子供たちや住民のための公園がたくさん作られているのです。
 どんぐりの木が主人公の公園もあれば、誰が座るのか松の林の中に横たわれるくらいの大きな椅子が置かれている公園もあります。
 小山のある公園、池のある公園もあるのです。
 いずれも、朝夕、子供の声が響き、昼間はバトミントンで遊んでいたり、バスケットをしていたりと青年たちも運動に興じる姿を見かけるのです。

 そうした中、ここはと言うと、時折、近くで働く会社員がランチをとっているのを見かけるくらいなのです。
 だから、なぜ、この公園には人が寄り付かないのか、いつもそう思っていたのです。

 南にホームセンター、北に小さな病院、あとは閑静な住宅街が控えている公園です。不審者が出るなどと言う情報もありませんし、何か過去に事件があったと言うわけでもないのです。

 先だって、ダリアの苗を買った帰りに、その公園に立ち寄り、その理由がわかるかも知れないと思い、ベンチに腰掛けて見たのです。
 人を不快にする光景、例えば、鶏糞を撒き散らしたような匂いとか、雑草の茂みに危険な動物が隠れ住んでいるなどと言ういかにも怪しげなものを想定させるものはありません
 子供を遊ばすに不適切な看板とかもありません。

 大きな柳の木が一本植えられて、それが公園の出入り口を覆っている、そんな具合なのです。

 その柳の木の枝の枝垂れ具合は素晴らしくて、そして、すだれのような枝の向こうにつくばセンターにある高層ビルが遠く霞むように見えるのです。
 
 そうか、これか。

 私はその公園の出入り口を覆うかのような枝垂れた柳の木を見て思ったのです。
 この柳の木がこの公園から人を遠ざけているに違いないと。

 人の深層心理の中に、柳の木に対する警戒感があるに違いないとふと思ったのです。
 要するに、この公園は、この柳の木のあることで、ちょっと不吉な雰囲気を持って、迫ってくるものがある、そう思ったのです。

 これが銀座あたりの裏通りにまだ残っている柳の並木道なら、そこに、髪の長い白い着物を着た女性が立っていても、「おっ、出たな」くらいで笑うことができますが、つくばの誰もいない公園であれば、「嫌だぁ、出てるぅ」となればシャレにもなりません。

 いや、誰もかれもが「出たな」と見たとか、そんなことを言ってるわけではないのです。私一人の「出たな」と言う思いが先行しているだけのことなのです。

 もし、そこに桜の木があれば、この公園の出入り口は、春の一時期、大いに華やぎ、その後、若葉の緑に目を癒され、冬は蕾の膨らむのを見ながら、春の華やぎを待つこともできますが、柳はそうは行きません。
 季節に関わらず、枝垂れた枝が、そこに恨めしそうにあるだけです。
 特に、夏ともなれば、細長い葉も茂り、あたりはなお一層鬱蒼として来ます。

 私たちの中にある深層心理が、きっと、あそこに何かいる。
 髪の毛を長く伸ばした、恨めしそうな姿の、身の細い女性がいるのだと思っても仕方がないのです。
 この公園の出入り口は、単なるそれではなく、異界へと繋がる口ではないかとそんな風にも思えてくるのです。

 つくばの街は野っ原に、あるいは、雑木林のあったところに、道を作り、周りを区画し、人工的に作られた街です。おそらく、誰一人として歩いたこともない、獣と異界の主だけがそこを歩いたところも、そこにはあったはずなのです。

 夜、あるいは、早朝、私がそんな場所を歩いているとだれかが後をつけてくるそんな錯覚にとらわれることがあります。
 私は、それは私の錯覚ばかりではないと思っているのです。
 確かに、あの田圃道しかり、畑ではあるのですが何年も耕されていない荒地の側の道しかり、不法投棄された冷蔵庫がほったらかしになっている雑木林の側の道を通るときしかり、私は何者かの姿をそこに感じることがあるのです。
 
 でも、あの公園の柳の木、もし、これが雌の木であったなら、様相はだいぶ異なっていたに違いありません。
 きっと、北京の初夏の名物、「柳絮」と言う綿飴のごとき白い綿毛を飛ばし、霊気を発散するのではなく、幸福感をもたらしてくれていたはずです。
 しかし、日本では雌の柳を植えることは滅多にありません。
 
 きっと、あの女は、雄の柳の木に寄り添って、思いを遂げられなかったことの恨みつらみを言っているのだ、そう思ってしまうのです。

 私の手にしているダリアの苗のいくつか咲いている赤紫の花が震えて来ました。
 私は、そそくさと立ち上がり、公園を抜け出したのでした。




コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

nkgwhiro

Author:nkgwhiro
ご訪問
ありがとうございます。

《 7/23 💦 Monday 》

🦅ただいま、<Puboo!>にて、『ノボさんのボール』を発信しています。ぜひ、アクセスしてみてください。ダウンロードもお願いします。

<この作品は、ブログ的短編随想集ともいうべきものです。
『不思議の曲<何日君再来>』は、<何日君再来>と言う楽曲が歴史に翻弄される様を綴った短編です。
『独りよがりの香り』は、ARANIS ALWAYS という名の香水にまつわる短編です。
『ノボさんのボール』は、これは自分でいうのもなんですが、発想が面白い作品です。ご堪能ください。>

下の[リンク]欄からアクセスして読むことができます。

❣️<Twitter>では、『ものかき』として、朝と晩『つくばの街であれこれ』の更新情報をつぶやいています。下の[リンク]欄からアクセスができます。

⏬下の[リンク]欄から、歴史小説『一門』『福明と李福』、旅行記『ポーツマスの旅』、また、<水彩画>など、<nkgwhiro>の創作活動にアクセスができます。  

皆様のアクセスを心よりお待ちしております。🙋‍♂️

リンク
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
フリーエリア