我が号は<竹里館主>と申します

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公園で、親子が満面の笑み。こんな表情をみると、平和と安寧が何よりも大切だと実感するのです。しかし、世の中は、得てして、平和と安寧とは逆行する素振りを示します。それが教育の場で為されるなんて考えただけでも身の毛がよだちます。


 雨が降ると、景色というのは一変するものです。
 雨が大気中の埃を洗い流し、空気さえも綺麗にしてくれるからです。

 そして、私の脳裏に、ある漢詩を思い起こさせてくれるのです。

 それは、盛唐の詩人、王維の漢詩です。
 高校生の時に、誰しも一度は目にする漢詩で、王維が、安西都護府に出かける元二を長安から渭城まで送ったという漢詩です。
 
 日本でも旅立つ者を途中まで一緒に歩き、送るということが行われていました。

 「むつましきかぎりは宵よりつどひて、舟に乗りて送る。」とあるのは、芭蕉の『奥の細道』の「旅立ち」の章にある言葉です。
 深川の芭蕉庵から千住まで芭蕉は川船で移動し、草加を経て春日部に最初の宿をとります。

 この生涯をかけた旅立ちのために、芭蕉庵を売り、それで得た金銭でこの旅を行うのですから、まさに全財産を投げ打っての壮挙となるわけです。
 その壮挙を、むつまじき仲間、いや弟子たちとでもしておきましょう、彼らが前日から深川に集って、早朝、同じ船に乗り込んで千住まで送るのです。
 親身で、情に満ちた惜別のあり方です。

 そんな送り方を王維も遠い昔にしていたです。

 王維の方は、友人でしょう、その元二が安西に公務で行くのです。
 西域を支配するために、唐王朝が置いた都護府はトルファン、この時代にはさらに先のクチャに役所がおかれたといいます。
 何千キロも離れたところに行くのです。
 もう長安に戻ってくることもあるまいと、今生の別れとも言うべき状況を詠んだ漢詩なのです。

 <渭城の朝雨軽塵を潤し 客舎青青柳色新たなり 君に勧む更に盡くせ一杯の酒 西のかた陽關を出ずれば故人無からん>

 王維の友人元二に対する真摯な思いがよく伝わってくる詩文です。
 惜別の感がひたひたと感情に迫ってくる詩です。
 現代では、およそ体験できない別離の詩なのです。

 王維にはもう一つ痛切な思いを託した別離の詩があります。

 <別離まさに域を異にす  音信いかんぞ通ぜんや>
 これは遣唐使として日本から長安にやって来て、唐の玄宗皇帝に使えた阿倍仲麻呂の帰国に際して詠んだものです。

 「この大海原の水はどこまで続くのであろうか、到底、見極めようも無い。
  その東の行き着く果てがどうなっているのか、私にどうしてわかるだろうか。
  唐の外にあるという九つの世界のうち、最も遠い世界、それが君の故郷、日本なのだ。」
 
 と詠い始め、

 「君の故郷日本は、太陽の昇る所に生えているという神木の、そのまたはるか外にあり、その孤島こそが、君の故郷なのだ。私たちは、まったく離れた世界に離れ離れになってしまうのだ。もはや、連絡のしようもないのだろうか。」

 と詩句を結ぶのです。

 日中友好などと言う言葉が虚ろに聞こえる昨今、本当に異国の友との別離を惜しむ言葉にはまごうことなき真実の惜別の感が満ち満ちている、そう思うのです。

 アルゼンチンで開催されている外相会合で、王毅がビッショプに述べた言葉があります。

 「豪州側の原因によって両国関係は困難に直面している。関係改善したいなら色眼鏡を外して中国の発展を見てほしい」

 どこか横柄さが滲み出ているように私には感じ取れて、今更ながら気に入らないのです。
 <改善したいなら>とか、そうでなければ、中国はオーストラリアに困難を強いることになると脅かしにも聞こえます。

 唐の時代の中国人は、仮にそうであっても、もっと言葉を選んで、相手を気遣って、文言を連ねていたのです。その良き伝統が王毅にはないのです。
 そんなつまらない話はこれくらいにして、卓越した国際人王維の話に戻りましょう。

 実は私は「号」なるものを持っています。

 <竹里館主>と言うものです。
 そうであるならば、つくばにあるわが宅は<竹里館>ということになります。

 それは、私が竹ノ塚に住んでいるときに名付けたものでした。
 典拠は言うまでもなく王維の詩文です。

 「独り坐す幽篁の裏 琴を弾じて復た長嘯す 深林人知らず 明月来たりて相照らす」

 と言う『竹里館』から取ったものです。

 私は、このつくばの<竹里館>の主として、一人薄暗い竹の林の中に身をおき、明月が私を照らしてくれるであろうその日を楽しみにしているのです。





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