昼飲緩酌微酔の趣

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打ち寄せる波、その砂浜を走ると、自分が早くなったような錯覚を覚えます。こんなに小さな子供だって、それを感じるとるのです。だから、その錯覚を楽しむかのように何度も何度も走るのです。実に楽しい浜辺での遊びです。



 酒そのものはもとより、酒を飲む雰囲気も好きだった私ですが、このところ、そういうところから随分と遠ざかっています。

 私には、私の両親の家系からしても、酒飲みの血筋は高い確率で継がれているのです。

 なにせ、母がたの祖父は、一斗樽を土間に置いて、毎朝、鳶の仕事に行く前に柄杓で喉仏を上下させて、飲んでから出かけたと言います。挙句に、酔っ払って、喧嘩をしたのか、それとも足をもつらせてなのかはわかりませんが、ドブにハマって死んでしまったというのです。

 父がたの祖父は鉄道会社の退職金を一晩で飲み代に使ったと言います。
 きっと、たかが知れた退職金だったのでしょう。
 詳しい話は聞いてはいませんが、息子たちに一銭の金も残さず、好き勝手に生きたと言います。晩年は三人の息子たちの家を渡り歩いて、暮らしていたのですから、それもいい生き方であると思います。

 しかし、どうやら、酒好きの癖は私に継がれていても、喧嘩を始めたり、無謀にも全財産を遊興費に使ったりの癖は、継いでいないようで、そればかりは感謝をしているのです。
 
 誰に感謝かと言いますと、それは両親です。
 あまりの無体な親を見て、そうあってはいけないと、真逆の人生を歩んでくれたおかげで、私は堅実実直な生活をする人間になっているのですから。

 自宅で仕事をするようになってから、外で飲むことがめっきり減ったこと、そして、夜も仕事をしているので、飲むわけにはいかないことなどからかつてのように何や彼やと理由をつけて飲む機会を逸しているのです。

 たまにやって来る婿殿も、最近、車を買って、運転して来るものですから、酒を出すわけにもいかず、そんなことも影響して、酒を飲む機会をなくしてしまったというわけなのです。

 そんな折、『酒の趣は昼飲に在り』などという文言に接したのです。

 結婚式など、昼時に行われる披露宴などで、この『昼飲』をしますが、どうも、『夜飲』よりも『昼飲』の方が酔い回るのが早いように感じて、あまり昼酒を飲むことはできないなと、それと、なんだか昼酒は道徳的観念に反する気持ちも強くあって、好きではなかったのです。
 「小原庄助さん、朝寝、朝酒、朝湯が大好きで」なんて歌もありますが、それは正月だけという観念が強くあったのです。
 
 人間のある種の幸福感を代弁するのが、自堕落なありようであります。

 昼頃までダラダラと布団にくるまっている、あの自堕落さです。
 朝早く起きて満員電車に揺られて会社に行くのではなく、ぬくぬくとして布団の中で気持ちよくボーッとしているあの雰囲気です。

 そして、目覚めの一杯、朝酒を喰らい、浅く酩酊する。
 旅先などで、朝からビールを飲むなんてこと、よくありました。
 これが気持ち良いのです。ワインの一杯も、ビールの一杯も、あるいは、梅酒でも、酒好きにはたまらない一杯になります。
 欧米では、ランチにビールを二、三杯は当たり前なんだとうしろめたい気持ちを正当化させながら、その一杯を美味しそうに飲むのです。

 さらに、湯に浸かる。
 こんな贅沢はありません。皆が汗水流して働いているのに、朝湯、昼湯に浸かるのです。浸かれば、身も心もさっぱりです。
 
 まさに、極楽、極楽といったところです。

 『酒の趣は昼飲に在り』では、昼間の酒は、ゆっくりと飲むのがいいと綴られていました。
 つまり、緩酌です。ワインであれば、チーズなどをあてにしてちょっとだけ口に含み、転がすだけでいいのです。
 酔うために飲むのではなく、心地よい時間を過ごすためのワインですから。
 つまり、「微酔」で良いというわけです。

 だとするなら、酒から遠ざかっていた私にも可能ではないか。
 ウッドデッキの木漏れ日が揺れる中で、「昼飲緩酌微酔の趣」を味わうのです。
 
 よし、ワインを整えよう、それに美味珍肴もあればいい。
 ワインはオーストラリアのバロッサバレーの白がいい。
 美味珍肴は、なに、国産のピーナッツでも良い、でも、中国産はダメだ。あれには毒が入っている、そんな気がするのだ。
 それに、イタリアの安いゴルゴンゾーラでいい。

 などと、心中で算段を施すのです。

 そうそう、忘れていました。
 「昼飲緩酌微酔の趣」のあてに一冊の文庫本が必要です。
 どんな本がいいのだろうか。
 それは本屋によって考えればいいと私は家を出て、「昼飲緩酌微酔の趣」を嗜むための買い出しに出かけるのです。

 はてさて、いかなる趣になるのか乞うご期待というところではあります。




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酒は百薬

おはようございます
お元気そうで何よりです
お夕食がお酒を美味しくしてくれるんでしょうね。

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こんにちは!
私は休肝日なしの老婆です。
夕食には一人飲みます。夫は飲みません。
ですが自分で作る肴にはお酒が合うのです。
清酒・ワイン・偶に焼酎ですよ。ビールは飲みません。
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