表層と深層の境目が

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雨降りの後、ちょっと蒸し蒸しする空気を感じながら、それでも、雨で綺麗に埃を落とされた空気の中に筑波のお山が見えます。そんな時、本当にこんな美しい光景の元に暮らせることに感謝するのです。


 私、本当にドキドキしているんです。

 米朝会談がご破算になったとか、いや、仕切り直しするとかいうことではないのです。
 スポーツで相手選手を故意に怪我させたとか、もりかけがどうだとか、ということでもないのです。
 
 五月二十五日、日経新聞夕刊の片隅に、小さな記事が載りました。
 
 <米国防総省は23日、今夏に予定している環太平洋合同演習(リムパック)への中国の参加を拒否すると発表した。声明で「南シナ海での継続的な軍事拠点化への最初の措置として、リムパックへの招待を撤回する。中国の行動は演習の理念や目的にそぐわない」と表明した。>

 たったこれだけの小さな記事です。
 <拒否する><招待を撤回><中国は演習の理念にそぐわない>と、随分と考えようによっては、過激な文言が並んでいると思うのです。

 私は、ここに、情勢における表層と深層の境目の際どさを見て取るのです。
 
 アメリカの矛先が明らかに、そして、的確に一点に絞られていると言うことに気がつくのです。
 もちろん、他の情報もネットで探りました。
 すると、一連の記事のそこかしこに、あの過激な文言に裏打ちされる、アメリカの怒りが見えてくるのです。

 中国は地域の緊張と不安定化を高める南シナ海の軍事拠点化を続けている。
 中国が南シナ海に造成した基地に数々の兵器を配置してきた証拠を持っている。
 これらは、国家主席が南沙諸島を軍事化しないとした約束に違反する、とし、「我々は2018年のリムパックに中国海軍を招待しない」としたというのです。

 つまり、あまりに横暴に振る舞う中国に対する、これは「初期対応」であるというのです。

 初期対応ということは、次の対応があり、最終的な対応があるということです。
 アメリカという国は、そういうことをきっちりとやる国であるということを、日本という国は過去に体験しています。

 太平洋に旭日のごとき勢いでのしてきた大日本帝国。
 海軍力を自力で向上させ、鍛錬を怠らず、さらには、これまでなかった戦略、すなわち、空母を使って、大量の航空機での打撃力を持つ帝国海軍。

 それをいかに潰すか。
 アメリカは、南太平洋の島伝いに北上し、日本海軍の拠点を潰しながらゆっくりと迫っていく作戦を、あの日露戦争の講和会議をポーツマスで開催したときから立てていたのです。

 だから、きっと、南シナ海で我が物顔で振る舞い、インド洋でも、東シナ海でも物事をあらだてる新興の海軍力を作り上げつつある中国人民解放軍に対しても明確な戦略を持って動いているのです。
 
 リムパックというのは、27カ国の海軍及びその他の軍事組織がハワイ沖に集って行う世界最大の軍事演習です。

 主催は、アメリカ海軍第三艦隊です。
 あのハルゼー提督が指揮し、日本海軍を追い詰めていったのが、この第三艦隊です。
 担当地域は、国際日付変更線以東、以西は、私たちにも馴染み深い横須賀に司令部を置く第七艦隊です。

 リムパックの目的は、参加国間の共同作戦能力の向上ですが、海軍組織を持つ海洋国家同士の親善交流にこそ大きな意味合いがあります。
 ですから、主催者は、同盟国以外にも参加を促し、<mil-mil engagement>、つまり、「軍軍関与」を醸成し、軍人同士の信頼関係を作りあげようというのです。

 かつて、若き日のニミッツ提督が海軍尉官として東京に赴いた時、連合艦隊を指揮してロシアバルチック艦隊を全滅させた東郷平八郎に会いました。そして、東郷の英国仕込みの英語に惚れ惚れし、そして軍人としてだけではなく人間としても尊敬の念を抱くことになるのです。
 太平洋戦争で日本海軍を破って進駐してすぐに、ニミッツは荒れ放題になっていた東郷元帥の座乗した記念艦『三笠』に手厚い保護を与えたのは有名な話です。

 そのため、演習ばかりではなく、お互い招待をしあい、また、受けながら人的交流を盛んにし、海軍軍人としての素養と国を超えたより良い人間関係を構築するという目的を果たそうと務めているのです。
 これは世界の海軍軍人が持つシーマンシップでもあるのです。

 その世界の海軍軍人が集まる場から中国を除外するというのですから、私はとてもドキドキしているのです。

 アメリカと太平洋を二分する海洋強国にするんだと国産空母を新たに建造、ゆくゆくはアメリカと同じように世界各地に空母艦隊を遊弋させようと計画している国です。
 その国が、世界の海軍をリードするアメリカの輪の中から除外されるというのですから、大ごとなのです。

 確かに、過去二回、中国は参加しましたが、国際慣例に疎い行動を行っています。

 最初の参加では参加登録をしていない情報収集船『北極星』を訓練海域に送り込み、各国の海軍の情報収集を行い、各国海軍からシーマンシップにもとると顰蹙を買いました。
 前回の参加では、レセプションに自衛隊を呼ばないなど非友好的な振る舞いを日本に対して行い、アメリカ海軍からあまりに露骨な敵対行動であると注意を受けました。
 だからこそ、こうした世界の海軍の集まりに出ることによって、国際慣例を身につけて欲しいと願っていたのですが、アメリカがとうとう匙を投げる格好になってしまったのです。

 初期対応の次に、いかなる対応をアメリカが中国にするのか、注視していかねばなりません。

 いうならば、新聞の片隅に、わずかに掲載される軍事行動にこそ歴史の表層があり、その分析を経て、その軍事行動が持つ深層を見極めていかねばならないということなのです。




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