思惑と損得ー新たな38度線

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植物は美しい、しかし、盛りを過ぎればその姿はみすぼらしくなり、そして、衰弱し、滅んでいくのです。それを見届けて、手入れをしたやると、命は復活してきます。だから、その折々の美しさを大切にしたいのです。瑞々しい葉の上に、今どきの雨つぶが乗りました。本当に美しいですね。


 ノーベル、ノーベルとトランプの支持者たちが連呼します。
 すると、ノーベルだって、と顔がほころぶのを私は見逃しませんでした。

 誰だって、栄誉を手にすることを良く思わない人はいません。
 政治家であれば、それは尚のことです。だって、歴史に自分の名が刻まれ、人類史の中に自分の業績として残るのですから。

 かつて、ヴァンクーヴァーから小牧空港に降り立ち、名古屋特有の派手なバスに乗って名古屋駅についたときのことを思い出すのです。
 成田であれば、迎えの車に乗って帰れるのに、小牧であれば、新幹線で東京までもうひと旅行しなくてはなりません。その憂鬱さを心に、重い荷物をホームに運び上げながら、引率する生徒の安全確認をし、短時間で「ひかり」に乗車させるために彼らをホームに並ばせます。
 やっと、一息し、キヨスクに目をやると、大きな活字が夕刊紙面に踊っていました。

 「ベルリンの壁崩壊」
 
 その大きな見出しの夕刊を手にしたときのあの高揚感を忘れることができません。
 カナダにいる間に、ありうべからざることが起きていたのです。
 東ドイツはどうなるのか、いや、東ドイツばかりではない、ソ連の政治経済圏にある東欧はこれからどうなるのかと、漆黒の闇の中を走る新幹線の窓に映る車内の生徒の嬉しそうなはしゃぎようを見ながら、私は思っていたのです。

 1989年の秋の日の出来事でした。

 あの時、自由を求めて、管理され、監視され、制限された社会から出ようという人々の熱気が感じられたのを今でも思い出します。
 その後の東欧の変貌、そして、ソ連の崩壊がそのとき始まったのです。
 あのクレムリンからソ連の赤旗が降ろされるなんて、そのときは想像だにしなかったことですが、ありうべからざることが、確かに、その後起きて、今の世界があるのです。

 でも、今、我が国の隣にある半島の国で、三十八度線がその意味を失うかもしれないといった時に、私が名古屋駅で持ったあの高揚感を感じることがないのはなぜだろうかと、私はウッドデッキに腰をおろして考えるのです。

 隣の国が戦争状態を終えて、平和裡に民族が統一されるんだから、素直に喜んではどうだと、私の心の中で、声が響きます。

 でも、南はともかく、北の人々はそれを喜んでいるのか、待ち望んでいるのか、そういった懸念もまた胸中に得体のしれない不可思議さとして浮かんでくるのです。
 三十八度線がなくなったとき、北の人々は、そう、あの東ドイツの人たちが我先に西ドイツに通じる検問所に押し寄せたように、非武装地帯にある今は使われなくなった線路上に、そして、境を隔てる橋のたもとに、あるいは、南北の兵士が警備する監視所に押し寄せてくるのだろうかと想念するのです。

 民族を同じくする韓国はともかく、陸地を接する中国やロシアではいかに対応するのか、あるいは、ボートピープルとなって日本海を渡ってきた北の人々に対して日本はいかなる対応をするのだろうかと、ここでも懸念が沸き起こるのです。

 そのようなことを考えたとき、ふと感じるのです。

 あの時は民衆の思いがはっきりと伝わり、いうならば、民衆が自由を求めて、自らの犠牲も厭わず動いたのに、今回はそうではないのではないのではないかと。

 動いているのは、政治的な思惑、それに伴う経済的な損得ではないか、そこには、自由を求める民衆の熱き血潮がないのではないかと。
 そんなことを、感じ、不安になるのです。

 思惑と損得では新たな紛争の種を撒くようなものです。

 今の中東の混乱は、19世紀の大英帝国の、そして、それを取り巻く国際社会の思惑と損得が契機となっていることを、私たちは歴史の痕跡として学んでいるはずです。
 
 にも関わらず、政治的な打算がまかり通っているとしか思えないのです。

 第二の中東が、東アジアに誕生するのでは困ったものです。
 南の力が北の力を圧倒すれば、アメリカがのして、それに対して、中国はなんらかの対応策をとるに違いありません。
 北の力が南の力を駆逐していけば、中国の政治力学が、対馬の隣まで及んでくるのです。そうなればアメリカはもちろん日本だって黙ってはいられなくなります。
 
 統一という何事も覆い隠す美辞麗句の化けの皮が剥がれた時に、熱は一気に冷めて、体制の異なる者同士の疑心暗鬼がのさばるようになるのです。

 ですから、対馬沖が新たな三十八度線になるということも十分に考えられるのです。

 そんなことを、木漏れ日がゆらゆらと動くウッドデッキの床を見ながら思っているのです。

 だって、日本の議員さんたち、さほどのことも議論してくれないし、本当に日本のことを思ってくれているのかと、私、彼らに対して、少々、疑心暗鬼になっているのです。




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