あの「口上」は何か大切なものを教えてくれているんだ

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空の青と雲の白、そして、雲の形があまりに綺麗に見えました。近くの建物、信号をシルエットにすると、なお一層青と白が鮮烈に見えます。


 大相撲のあの親方の一件があってから、相撲に対しての興味がだいぶ失せてしまい、このところ、中継を見るのも嫌になっていたのです。

 しかし、新聞にこんな記事が載っていたのを見て、少し考え直そうかと思っているのです。

 「親方の教えを守り、力士の手本となるように、稽古に精進します」

 弟子の親方に対する感謝と敬意がにじみ出ている口上です。加えて、これまでの相撲界の不祥事を払拭するかのような文言がそのあとに続いています。
 他の力士の手本となるべく稽古に励むというのですから。

 相撲らしからぬ手で勝ちに行く横綱がいる中で、この言葉の意義は大きいと思いますし、あの親方が、小難しい四字熟語を使ったのとは対照的にシンプルで心のこもった口上だと感じ入ったのです。

 それにしても、春日野親方というのは、出来た人なんだと、テレビニュースでその姿を拝見して思いました。
 なんでも、スパルタで弟子たちを鍛え上げたり、あれこれと人生訓を垂れたりはしないそうです。むしろ、負けが混んだときとかは、自信を持たせる言葉をかけるそうです。

 一言で言えば、この親方は、弟子の持っている個性を尊重しながら、自信を持たせて、その潜在的な力を伸ばす教育者であるかのようです。教育を職業としている人が、教育者らしからぬ振る舞いに出ていることの多い昨今ですから、こうした話を聞きますと実に心が和みます。

 教師の世界にも、スパルタ式で生徒を鍛える教師と、そうではない教師がいます。
 前者は、怖い先生を演じ、後者は優しい教師を演じるのです。
 あなたはこっち、君はそっちと決めているわけではないですが、いい学校というのは、この両者が巧みに絡み合って、生徒にものごとを伝えていくそんな感じがするのです。
 スパルタ一辺倒では教師と生徒との間に溝ができますし、優しい先生ばかりでは未成年の子供達にしめしがつかず、学校は崩壊をします。
 ですから、両者が巧みに連携することが肝要なのです。

 まるで、怖いお母さんと優しいお父さん(反対ですって、そうかな?)が、子供を育てるかのようにです。

 仰木監督というパリーグで監督をしていた方がいました。
 野茂を育て、イチローを育てた監督です。

 野茂やイチローが名門巨人軍に入っていれば、おそらく、メジャーで活躍する選手として成長はしなかったと言われています。
 あの体をひねった投球、ゴルフのようにバットを振る独特の野球センスを、巨人に入団すれば、コーチたちが寄ってたかっていじり、並の選手になっていったというのです。

 それに対して、仰木監督は、それを個性として尊重しました。
 だから、野茂のそれは「トルネード投法」となり、全米にセンセーションを巻き起こさせたのです。イチローのは、「振り子打法」となり、これもまたアメリカの少年たちに多大な影響を与えていったことは疑いようのない事実なのです。
 
 指導者はまさにかくあるべしという話です。
 
 「親方の教えを守り、力士の手本となるように、稽古に精進します」

 この口上、読めば読むほど、単純明快です。
 弟子としての謙虚さも見え、その背景には親方と弟子のさりげない、ほんわかとした関係を読み取ることができます。
 親方を手本として、稽古に励んで、立派な力士になるという決意でもあると読めるのです。
 
 ですから、そう言わしめる親方のありように自然関心を持つのです。

 きっと、右も左もわからないまだ年若い頃に弟子入りして、親方の優しさに触れながら、やってきたのでしょう。
 聞くところによりますと、おかみさんは彼の国の言葉を勉強して、コミュニケーションを図ったとも言います。
 簡単にいうけれど、そうそう簡単にできることではないと思います。
 部屋全体が、そのような友好的なムードであり、人間的な関係を大切にする環境下にあったと私は思うのです。
 
 人間は、いかなる人でも、自信を失う時というのがあります。

 一端の大人であれば、自分の力で克服もできましょうが、生徒や学生、それに、文化の異なる国の、しかも、伝統にがんじがらめになっている大相撲の世界に入ってくるのです。右も左もわからない外国人青年が、スパルタ式で己の力で克服せいと言われたら、彼はその時点で母国に帰っていたはずです。
 そうではなく、人間誰しもそういう時があるよ、そういう時は自分を信じるんだよ、きっと、いい時があるのだから、稽古を飽きずに、やっていくんだよと言われて、きっと、この力士は前を向くことができたのだと思うのです。
 
 大相撲も、レスリングも、そして、あのアメフトも、思えば、親方、コーチ、監督といった人たちの奢りと、他人には厳しく、己には甘い、いや、自己利益に走ったことから発した問題でした。

 今回の「口上」を読み解き、そういう立場にある人が、弱き立場の人の心を弄ぶことのないよう戒めて行かねばならないと痛感しているのです。




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