第二章の予感

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時折出向く筑波大学の構内の様子です。樹木が多く、カナダかどこかのキャンパスに足を踏み入れたような気がするときがあります。こういうところもつくばのいいところだと思っているんです。


 私が海釣りを始めたのは、ちょうど五十歳になった時でした。

 取手の学校に勤めていて、いろいろと厄介なことがあって、むしゃくしゃする時も多かった時です。そんな時、ふと、釣りでも始めようかなと何気に思ったのです。

 で、通勤途中にある何軒かの釣具店に寄ってみたのです。

 そこにいた背の高い若い店員さんに釣りを始めるから基本的な道具を教示してくれと頼みますと、何を釣るのか、場所はどこかと面倒臭いことを聞いてきます。
 それがわかったら、あなたに、かような質問はしない、当方は釣りを始めるのだから、基本的な道具が欲しいのだと、こちらも同じことを繰り返します。

 埒があかないので、当方、かなり不機嫌になり、次の店に行きます。
 そこでも同じ質問をします。
 私よりちょっと若いくらいの感じのする店員がいました。

 実は、今でも、その人と付き合いがあるのです。もちろん、釣りの専門家と客としての付き合いいにすぎませんが。
 そうそう、このかた、店員ではなく、店長さんでした。

 そうですね、ここらであれば鹿島あたりの堤防で釣りを始めるのがいいですね。
 こう来なくては行けません。

 私は、鹿島の堤防なるところで、齢五十にして、初めての釣りを始めるのである、と得心したのです。

 最初からウキ釣りというのも厄介ですから、おもりをつけてそれを海にぶっ込み、ネザカナを狙いましょう。
 ネザカナ? 寝ている魚を釣ると言うことなのかな、と彼が言っている言葉の意味がいま一つわかりません。
 慣れてきたら、ジェットテンビン使って遠くに投げて、(ジェットエンジンでもついているのかしら)それから、イソザオ(竿にもいろいろあるようだ!)にして、本格的なウキをつけてウワモノ(ネザカナの次はウワモノか)を狙えばいいでしょう。

 こうなると外国語の習得と同じです。
 でも、これが私を夢中にさせたのです。
 一本の竿とオモリと、釣り糸に釣針を手にして鹿島に出かけました。

 しかし、大問題が起きたのです。

 鹿島の近くの釣具店に入って、オモリで釣りをするので餌をくださいと。
 店主、怪訝そうな顔をして、何を釣るのですかと、だから、ネザカナですと答えると、じゃ、これです。五百円ですと。
 意気揚々、何人かが竿出す堤防を釣り場と定めますが、新聞紙で包まれた五百円の餌を見てびっくり仰天、イソメと言うその生き餌を私は掴むどころから、見るのも嫌な独特の形態をしていたのです。

 釣りをづることもできずに、私はつくばに戻り、店長の元に直行します。

 イソメがつかめなくては釣りはできないなぁ、じきに慣れますよと、意地悪そうに当方を見ます。そして、「イソメ掴み」なるアイデア商品を私に紹介してくれます。
 トングを小さくしたたったそれだけの道具ですが、当方としてはしてやったりの道具です。

 東京湾で、釣り船に乗って、キス釣りをしている時、私の釣りの様子を見ていた船長さん、あんた随分器用にイソメをつけるねと、あのイソメ掴みを操って餌付する私に感心をしてくましたから、きっと、私はあの蛇のようなイソメを結構上手につけていたのだと思います。

 その後、私の釣り歴は年ごとに増して、ウキを使った釣りにまで発展して行きます。

 気がつくと、買ったはいいけれど一回も使っていない釣竿まであります。
 行きもしない小島の絶壁での釣りを想定した釣竿です。
 見ると欲しくなる、趣味人が陥りやすい落とし穴に、はまってしまった結果です。

 当時の私のワーゲンには釣りの道具が所狭しとおかれ、ある時など、それを同僚に見られてしまい、ちょっと恥ずかしい思いをしたくらいなのです。
 仕事をしているのか、釣りをしているのわからないと。

 家で仕事をするようになれば、好きなときに好きな釣りができると思っていたのですが、そうもいかないのが現実です。
 仕事に忙殺されて、釣りに行くどころではなくなっていたのです。
 
 そんな折です。
 近くに住む娘からラインが入り、子供達が釣りをしたがっていると言ってきたのです。
 わかった、用意をしておくから、連れてきなさいと、さぁ、それからが大変です。
 
 ちょうど、二本、最初に買った初心者用のぶっ込むだけの竿がありました。
 これを子供でも釣れるように仕掛けを施して、つまり、餌はつけないで済む、ひらひらのついたサビキ仕掛けで、オキアミという小さなエビを入れるカゴをつけた仕掛けです。
 そして、孫たちを連れて、釣りに出かけたのです。
 もちろん、行き先は鹿島の堤防です。

 連れたのは、小サバです。
 サバは小さくても仕掛けを壊す厄介者ですが、孫たちは大喜びです。
 だって、何も見えない海の底から、何か引っ張る感覚があって、糸を引き上げれば、生き生きとした元気な小サバがいく匹も付いてくるのですから、それはまるで宝を海のそこから引き出したようなものであったのです。

 孫たちはキャキャと堤防の上で大はしゃぎです。
 
 五十歳の時に、釣りを始めて、孫たちに釣りを教えるなんて、想像もしたことがありませんが、こうして、釣りをするのも意外に楽しいものだと思ったのです。
 あと十年もすれば、彼らも一端の釣り人になって、きっと、東京湾で一緒に大きなスズキを釣り、カサゴを釣り上げているだろうなと思ったりするのです。

 そうそう、ゴールドコーストにも釣りを好きそうになる悟空という名の孫がいます。
 あちらでは、カジキです。
 トローリングで南太平洋の海を疾走するのです。

 なんだか、私の釣りの第二章が始まる予感がしてきました。




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