何故 守ってやらないのか 心配してやらないのか

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冬越ししたランタナが満開になりました。小さな花が寄せ合って花を咲かせ、一つの大きな花を形成しています。花が終わったら、肥料をやって、来年も咲いてくれるように養生をしたいと思っています。


 関係者が居並び、低姿勢で、いや、腰を直角に、いやそれ以上に折って、カメラマンが切るシャッター音がひと段落するまでの数十秒間、頭を下げて謝罪する、そんな姿をニュースで見るようになって、どのくらい経過するのでしょうか。

 あまりにそうした場面が多すぎて、この謝罪のあり方も、どこか誠意のなさを感じるという方が多いのではないかと思っているのです。

 昔から、日本ではこうであったのかしらと首を傾げて記憶を辿るのですが、組織でも個人でも、何かミスをしたからといって、これほどまでにカメラの前で頭を下げたであろうかと思い出すのがそうそう容易ではないのです。
 もっとも、昔はビデオがなく、写真だけであったので、それも影響しているのかなとも思っているのです。
 
 それにしても、あの山一證券社長の「社員は悪くはありません」という会見は、とても強い印象として残っているのです。

 野澤正平という方です。
 山一證券最後の社長であり、就任からわずかに四ヶ月後の会見でした。
 社長就任後、巨額の違法債務を抱えていることを野澤は初めて知るのです。
 その根本を作ったのは前会長行平次雄です。それを社長の三木淳夫がなんとか解消しようと勤めるのですが、三木は問題を解決できないまま退きます。
 そして、野澤が何も知らずに新社長に就任するのです。
 
 債務をなんとかなくそうと他社との提携、規模縮小など手を打ちますが、もはや手遅れの状態でした。
 こうなると経済界という世界は冷たいものです。
 投資家たちは山一の株を売り、そのため株価の下落は止まらず、ついには、頼みの銀行も支援を打ち切ります。挙句には、当時の大蔵省も見放すのですから、実に冷たいものです。
 でも、それが経済界というものなのです。

 社長就任からわずか四ヶ月後、野澤は、<自主廃業>を決断せざるを得なかったのです。

 1997年11月24日は勤労感謝の日の振替休日でした。
 自主廃業に向けた取締役会は、早朝午前6時の開催でした。
 そして、お昼前、記者会見がなされたのです。
 淡々と事実を公表し、日本の一証券会社が自主廃業をする、たったそれだけの会見の予定でした。それでも、記者からの質問は続き、二時間あまりにわたる会見になりました。

 ある記者が、何気に、社員にはどう説明するのですかと野澤に問いました。

 すると、野澤は思いつめた表情になり、そして、立ち上がって、頭を下げ、号泣しながら言葉を発したのです。
 『これだけは、言いたいのは、私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから。どうか社員のみなさんに応援をしてやってください、お願いします』と。
 そして、さらに『善良で、能力のある、本当に私と一緒になってやろうとして誓った社員の皆に申し訳なく思っています。ですから、一人でも二人でも、皆さんが力を貸していただいて、再就職できるように、この場を借りまして、私からもお願い致します』と声をあげたのです。

 このニュースをテレビで見た私は、社長が顔をくしゃくしゃにして、涙を流して、社員に謝る、その姿に、最初は異様な感じを受け、そして、これこそが誠意ではないかと心のツボにすっと落ちる何かを感じとったのでした。

 俺は社長になってわずか数ヶ月、会社が廃業する大元は別人がやったこと、とんだ役回りをもらったもんだと与太を飛ばしたらどうでしょう。
 いや、この時代、金融機関が相次いで経営破綻をし、少なからず、経営トップの醜態が晒されていた時代でもあったのです。ですから、新聞も、無責任経営者が会社を潰すとか、誠意のかけらもない記者会見とか、言いたい放題に書いたと思います。

 しかし、野澤はそうではなかったのです。

 経営者は社員に仕事をしてもらい、その社員の生活に責任を持つのです。
 それができなかったことを心底詫びて、涙を流したのです。
 当初、面白おかしく、野澤のくしゃくしゃの顔を報道していた各社は、これこそ誠実なあり方ではないかと報道の趣旨を徐々に変えていくのです。

 その後の野澤のことについてはよく知りませんが、きっと、それなりの活躍をしているはずです。商売では冷酷な経済界であっても、誠意がある人なら、その人を無駄死にさせるはずはありませんから。

 先日、一人の二十歳になったばかりの学生が記者会見に臨みました。

 自分の行ったプレーを恥じ、そして、記者の厳しい質問に誠意を持って答えたのです。
 この時の誠意は、自分を庇うことをしないという形の誠意でした。
 青春を投げ打って取り組んできたスポーツを汚したと自ら断罪し、自分にはもうプレーをする資格がないとまで言って、頭を深く下げたのでした。

 誰が見ても、この青年に嘘偽りはない、あるのは、上に何かがつくくらいに真っ正直に立ち向かう姿でした。

 その証拠に、被害者の側がこの青年と心を通わせています。
 しかし、この記者会見には、チームの代表者も、彼が在籍する大学の責任者もいませんでした。

 世間は今、そのチームと大学の代表者の責任を問うているのです。
 何故に、守ってやらないのかと。何故に、心配してやらないのかと。




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