『対峙する列強の図』 世界史に残る一枚

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今の時代は、逆さまの時代、味方が敵になり、敵におもねる、そんな時代なのです。それを象徴するのが、この一枚の絵です。たった一枚の絵が多くを実に語っています。


 『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』

 そう名付けられた油彩画は、幅10メートル 、高さ6メートル の大作で、ナポレオンに仕えていた画家ジャック=ルイ・ダヴィッドが、1807年に描いたものです。

 ナポレオンの戴冠式は、パリのノートルダム大聖堂で行われました。

 式典のありようを後世に伝えるため、そして、ナポレオンが「フランス人民の皇帝」として革命を引き継ぐ者であると示威するためにも、この絵画は描かれなければならなかったのです。

 私は、この絵を歴史の教科書で見ました。

 注釈には、教皇ピウス7世は、教会と政府との危うい均衡を守るため、甘んじて即位を祝しているとあり、その表情に注目し、また、観覧席に自分を描いたという画家ジャック=ルイ・ダヴィッドを探しました。

 面白いのは、妻ジョゼフィーヌです。
 彼女は教皇からではなく、ナポレオンから戴冠をされています。しかも、当時40歳のジョゼフィーヌの何と若々しいこと。皇帝の妃は若くてはならないというナポレオンの指示が画家に出されたためです。

 さらに、愉快なのは、式典に出ていない母マリア・レティツィア・ボナパルトが描かれていることです。
 しかも、観覧席に描かれている教皇よりも重要な位置にその座を占めているのです。
 画家の忖度ではありません。
 明確なナポレオンの指示がそこには働いていたのです。

 この母の欠席理由は、ナポレオン、リュシアン、ジョゼフ兄弟間の諍いに抗議するというのですから何とも家庭的です。

 そんな観点からこの絵を見ると、フランスの歴史の一断面をえぐるばかりではなく、俗物としてのナポレオンの姿も見て取れて、それはそれなりに興味の尽きない絵画ではあるとつくづく思うのです。
 
 さて、それにも匹敵するであろう一枚の図を、BBCのサイトと日経新聞の6月10日付朝刊で、私は見ました。

 一人の老人が腕組みをして座っています。
 その前に、一人の女性がテーブルに両手をおいて、何かを迫っています。老人の横には白い口ひげを蓄え書類を手にした男が立ち、迫ってくる女性を蔑んだように見つめています。
 その横には腕を組んで幾分体を傾けて苦虫を潰したような表情をする男が立っています。
 顔は判然としませんが、周りに大勢の男女が心配そうな、そして、困惑した表情で立っているのです。

 二百年も前であれば、これが大きなキャンバスに油絵で描かれて、『対峙する列強』とでも題して発表されるのでしょうが、21世紀の現代では、生々しい写真として即刻配信されるのです。

 腕組みをして座っているのはアメリカ大統領トランプ。その前で両手をついているのはドイツ首相メルケル、白い口ひげの男はアメリカの強硬派ボルトン、そして、その横で、腕組みをして苦虫を潰しているのは日本首相安倍です。

 これまでサミットは大団円で終わり、世界の安定を誇示してきましたが、この『対峙する列強』の図では、どうもそうではないようです。
 アメリカに対して、詰め寄る欧州とカナダ、その対立の狭間で困惑する日本という世界の実像がさらけ出された、そんな感じがするのです。

 一方、同じ日の新聞には、もう一方のグループが存在感を誇示していました。

 「SCOは今や国際秩序を補完する重要な力だ」と誇示したのは中国国家主席習近平でした。
 <上海協力機構>、耳慣れない組織ですが、中国とロシアが、まるで、<G7>の向こうを張って、同じ日に会議をぶつけてきていたのです。
 もはや、G7では国際問題を解決できない、SCOこそ新しい世界を導く組織であると豪語せんばかりの勢いです。

 でも、そこにはドラマはありません。
 役者不足とでもいいましょうか。歴史という画面に描くにはあまりにも狭隘な図でしかないのです。

 この図『対峙する列強』は、現代の世界を的確に捉えた21世紀を写すモチーフになると思っているのです。
 この図から、今までの世界から次の新しい世界が始まるその転換点となるそんな図のような予感がするのです。

 はてさて、それは自由を標榜する私たちにいかなる影響を与えていくのでしょうか。
 ちょっぴり、不安が心をよぎるのです……。




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