粋な食文化をまた作り出せばいいだけの話さ

338mjdb4t3b49w
我が宅からの朝日は隣の研究所の松林をすかして昇って来ますが、夕日は何もない空の果てに沈んで行きます。ですから、こんか素晴らしい光景を見せてくれるのです。


 我が宅の食卓に、自家栽培の野菜がのぼる季節になりました。

 そら豆。
 昨年の十一月にタネを蒔き、ほったらかしにしておくと、この時期、あのふっくらとした鞘の中に、柔らかく、甘い、あのそら豆がなってくれるんです。
 自分の口に入るのはたったの一回。それも小皿に十数粒。
 あとは娘に持って行ってやったり、近所の人にやったりして喜ばれているのです。

 先日は、セロリに、モロヘイヤ、きゅうりと採りたての野菜をいただき、これがあるから田舎での生活はやめられないと一人好い気になっていたところでした。

 そういえば、この季節、アナゴが旬なんです。

 東京湾で釣りをしていた頃、船長が、今度アナゴの船を出しますから、どうですかと勧められたことがありました。 
 夜釣りの好きな私にはうってつけの釣りだと思ってくれたのでしょう。

 アオイソメを一本縫いつけて、海底を小突いてトントントン、アタリがあったら少し糸を繰り出して、引けば良しと軽快に言うのです。
 でもね、あの細長いのが上がってくるのはあまり気持ちがいいもんではないからなと私ためらいます。

 いや、浅草あたりの天ぷら屋で、アナゴの一本揚げなど食べるんですよ。
 カラッと揚がっていて、さっぱりとした脂のアナゴは大好きなんです。
 ギラギラ脂ぎったうなぎなんかよりずっといいんですが、何しろ、前世、あの細長いものに殺られた経験をしているらしく、どうも、ダメなんです。
 と、断ったことがあるんです。

 私はどうも貧乏性にできているようで、寿司だってさほど食べたいと思うことはないんです。あのすし飯ってやつがどうもいけないんです。
 うなぎもねぇ、あの形さえなければいいのですが。
 そうは言うけど、寿司もうなぎも食べないことはないんです。行きつけの店もありますしね。
 でも、心の底から、今日はうなぎが食べたいとか、寿司食いてぇとは思わないのです。
 
 だったら、四川の髪の毛がぐっしょり濡れるくらい辛い麻婆豆腐か、ベリーホットのラムカレーをナンで食べようと言われた方が生唾がでてくんです。

 きっと、私は、四川の山奥かインドの場末で、あの細長いものに殺られた小動物か何かが、間違いなく前世での姿であったと思っているんです。

 話が随分と逸れてしまいましたが、旬といえば、日本の周りで異変が生じているようですね。

 秋刀魚がまず取れていないと言います。
 ちょっと前には、北海道でスルメイカがいなくなり、関係者は壊滅的な打撃を被ったと言っていました。
 さらには、カツオも不漁だとか。

 麻婆が好きで、インドのカレーが好きな私も、一応日本生まれの日本人ですから、尻尾を目にさして、こんがり焼かれた秋刀魚のわたの美味しさはよくわかっています。イカなどそのまま食べてもいいですが、わたを絞って塩辛にしてもいいものです。カツオなどニンニクのかけらと一緒に土佐造りで食べるなんざ粋であることはよく知っています。

 でも、最近、塩辛も、秋刀魚の刺身も、ましてや、尻尾を目に通したまるまると太った秋刀魚を食べていないんです。

 酒は随分と飲まなくなりましたから、塩辛も当然口にする機会を失しますが、秋刀魚やカツオは酒には関係ありません。あれはご飯のおかずですから。
 では、なぜ、食する機会が減ったのか。

 きっと、それらが、昔ほど、庶民的ではなくなったからだと思っているんです。
 
 マーケットの魚コーナーで、まるまると太った秋刀魚を見て、こりゃ美味しそうだと思う秋刀魚の値段の高いこと。

 居酒屋で、何千円も出してノドグロやキンキの焼き魚を食べますが、それは焼き方が絶妙だからです。でも、あれほど高い秋刀魚を買っても、家では、満足のいく焼き方ができません。
 だから、高いなと一言言って去って行くしかないのです。

 もちろん、近くに、手頃な秋刀魚もあります。
 でも、なんだか細くて、サヨリのようで、うまそうじゃない、そんな若僧の秋刀魚など取ってきちゃダメだと怒りながら、その場を離れて行くこと数限りなく、あるのです。

 水温が高い「暖水塊」が日本近海に発生して、12から18度くらいを好む回遊魚が回遊してこなくなったことが一因。
 それに、中国です。なんでも、ごそっと持って行くと言います。
 そこで、日本が「北太平洋漁業委員会(NPFC)」で、国や地域別の漁獲制限を取り入れるよう提案するのですが、「日本はサンマ不漁を中国のせいにし、自国の利益だけを考えている」と、いつものやっかみを言ってくるのですから、如何ともし難いと言うしかありません。

 だったら、こう考えようではないかと思っているのです。

 季節の情緒とあいまって、食を楽しんできた文化を私たちは一旦過去のものとして、21世紀にふさわしい新しい文化を構築して行こうと。
 過去の情緒、粋さを懐かしむのもいいですが、そのものが手に入りぬくいなら、そうではないものを新しい粋さにするのもいいではないですか。

 江戸の時代の、江戸っ子だって、最初から、今私たちが懐かしむ食文化を堪能していたわけではないのですから。





自分らしさランキング

コメントの投稿

非公開コメント

またまたありがとうございます

この絵が、我が宅のバルコニーから見えるのです。素晴らしいでしょう!

これは

この写真、ひょっとして、大傑作じゃないですか?  こんな色合いの綺麗な・・・。ワンダフル! だと思います。

プロフィール

nkgwhiro

Author:nkgwhiro
ご訪問
ありがとうございます。

《 9/23 🎂 Sunday 》
 
🦅ただいま、<Puboo!>にて、『nkgwhiro短編作品集「ある夏の五つの物語」』を発信しています。今回は有料作品となります。五つの物語のうち、試し読み作品をひとつ設定してあります。ぜひ、お目を通してくださればと思います。

<15.304字 400字詰原稿用紙38枚                            夏は、物語するにもっとも良い季節です。
開け放たれた扉の向こうから、異人たちも遊びにきてくれます。出かけた先でも、異人たちは向こうからやってきてくれます。
そんな異人たちとの出会いを綴った「nkgwhiro短編作品集」です。>

下の[リンク]欄からアクセスして読むことができます。

❣️<Twitter>では、『ものかき』として、朝と晩『つくばの街であれこれ』の更新情報をつぶやいています。下の[リンク]欄からアクセスができます。

⏬下の[リンク]欄から、歴史小説『一門』『福明と李福』、旅行記『ポーツマスの旅』、また、<水彩画>など、<nkgwhiro>の創作活動にアクセスができます。  

皆様のアクセスを心よりお待ちしております。🙋‍♂️

リンク
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
フリーエリア