星だけが知っている

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この道は、私がゴードコーストで暮らしている時、よく歩いていたロビーナの小道です。季節は秋、緑豊かな小道です。



 コロンブスも、ヴァスコ・ダ・ガマも偉大な探検家であり、同時に、時の大帝国の外交官としてその果たした功績は、人類の足跡に深く刻まれる人々であると思います。

 でも、3万年前、名もなき人々が太平洋を渡ったことを賞でる人はさほど多くはありません。

 縄文の遺跡から出て来る丸木舟、そこには帆柱はありません。
 ただ、櫂を置く船べりの溝だけが残されているのです。
 つまり、3万年前、名もなき人々は、オールを操って、太平洋を漕いで、何日も何日も航海を続けたのです。
 これこそ、人類にとって最も偉大な探検であり、ロマンあふれる航海であろうと思っているのです。

 取手の学校にいる時、私は生徒たちに、一人の老人が太平洋に単独で旅だったというニュースを見たら、それは私だと思ってくれと大見得を切っていました。
 とりあえず、船は用意できましたが、まだ、太平洋から奥まった霞ヶ浦の、最も北に位置する安全な港に停泊をしたままなのです。
 生徒に、夢と希望を持つことが大切だと教えたかったからなのですが、実行がいまだなされていないと、当時のもう四十になんなんとする教え子たちは思っているに違いありません。

 この太平洋を縦横に移動した人たち、今から一千年前には、太平洋にある島という島を全部見つけて住み着き、時に行き来していたというからすごいことです。
 
 風の強かったある日曜の夕暮れ時、バス釣りアングラーやヘラブナ釣り師たちの誰もいなくなった港の一角の船の上で、波の揺れを感じながら、うつらうつらしていました。
 係留しているロープが風と波におされて軋む音が、寂寥感をより一層際立たせていました。

 鹿島に釣りに出かけるとき、鹿島の工場地帯に林立する煙突、そこから上がる煙を見て、風の具合を図って、今日の釣りの仕掛けを考えながら車を運転していました。
 今、土浦の港に行く時、私は筑波山を必ず見て車の運転をしています。
 見ようとしなくても、当然、目に入って来るのですが、よしんば、二つある頂上に雲がかかっていれば、それは要注意の印です。
 そんな時、霞ヶ浦の沖合は白波が立ち、荒れ模様になる度合いが高まるのです。
 
 この港で、海技免許を取得した時、教科に「観天望気」なる科目がありました。
 古来より伝わる、しかし、極めて科学的で、理にかなった言い伝えを学ぶのです。

 それは何も、海技に関わらず、私たちが生活の中で使っているものでもあります。
 例えば、夕焼けが出れば明日は晴れ、朝焼けは天気が悪くなる印、ツバメが地面すれすれに飛んでいればまもなく雨が降る、というようなことです。

 ですから、筑波山山頂に笠雲がかかれば雨風が、中腹に雲があれば天気は良好、雲が東京方面から流れてくれば追っ付け雨が降るし、筑波山の向こうからこちらに雲が流れてくれば安心というような具合で、教官から教わったのです。

 いつだったか、そう、冬の午後遅く、沖合に出て、あまりの夕景の素晴らしさにしばらく沖合にとどまっていた時がありました。
 そして、東の空にあの三つ星のオリオン座があることに気づきました。
 当然のごとく、冬の大三角形と言われるペテルギウス、プロキオン、シリウスが目に入りました。
 ペテルギウスはオリオン座に、プロキオンはこいぬ座、シリウスはおおいぬ座の星です。
 その時、そのシリウスの真下あたりに赤い星を認めることができたのです。
 
 あれ、こんな星あったからしと思いつつ、後日、その星のことをあれこれ調べたのです。
 この星、カノーブスという星でした。
 中国では、赤い星ということで縁起がいい星として、「南極老人星」と呼ばれています。「南極老人」とは、福禄寿のことで、長寿をつかさどる神と言われています。
 
 茨城では、カノーブスを「メラボシ」と呼んでいます。
 漁師は、この赤い星が水平線の上に見えると風が強まり、漁にならないと言うのです。

 関西では、ゲンクロウと言うと、取っている新聞の記事で読んだことがあります。
 あの義経のようにさっとあらわれて消えていった英雄のような星だからか、あるいは、その赤い星が義経の魂のように見えたのかはうかがい知ることはできません。

 でも、確かに、そこには物語があると言えます。

 海を渡った勇敢なる民が、大地に腰を落ち着けてからも、彼らは目に映る自然の現象をつぶさに見て、それを物語にして、私たちに言い伝えてきているのです。
 だから、そこには雄大なロマンがあり、心に染みとおる物語があるのだと思うのです。

 いくら聞いても聞き飽きないロマンであり、物語です。

 さぁ、私の太平洋への船出はいつになるのか。
 先日、私が停泊している船の上で、ロープワークの訓練をしていると、一隻のカヤックが港をスイスイと渡ってきました。
 私の好奇心がぐっと頭をもたげてきました。
 カヤック、4サイクルエンジンのうるさい音を聞きながらのクルージングよりも、カヤックの一馬力の方がいいかもしれないと。
 
 はて、これから私のシップマンライフはどうなって行くのでしょうか。
 それは、きっと、星だけが知っているのかもしれません。





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