日本時間7月5日の早朝

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ゴールドコーストから成田への直行便は、たったの一本。朝立ち、夜の7時につきます。ですから、窓側の席を取って、ニューギニアのジャングルであろう、そこをくねる川を、そして、名も知らぬ島を、そこで暮らす人を思うのです。でも、ほとんどは、青い空に蒼い海、そして白い雲。それを飽きもせず眺めるのも、実は楽しみなのです。


 強い風が書斎の窓に大粒の雨を叩きつけてきます。しかも、その風が尋常ではありません。我が宅が揺れ動くほどの強い風なのです。
 まったく憂鬱になります。
 
 気が滅入ってしまったので、机を離れ、テレビの前のソファーに腰をおろします。
 大粒の雨がガラス窓を打ち付けている様子が、朝暗い中でも良くわかります。
 何気にテレビをつけると、こんな朝早いのに、MLBの中継をやっていました。

 おやっ。
 そうか。
 今日は独立記念日なんだ。
 
 選手のソックスが片方はストライプ、もう片方はスターがデザインされています。背番号も、星が彩られて、普段のユニフォームと違っています。審判の帽子も赤いキャップになっています。
 観客席には、星条旗をデザインしたハットがこれでもかとあちらこちらに見られます。

 アメリカは今日は祭日なんだ。
 だから、デイゲームで、球場は大入り満員なんだとそんなことを思いながら画面に見入っていました。

 1776年7月4日、グレートブリテン王国によって統治されていた13の植民地が独立することが宣言されました。
 以来、240余年の月日が経過したのです。

 幕末、新しい世界を夢見る志士たちにとって、鍛冶屋の息子や百姓の息子だって、トップに立ってまつりごとができる国があることは大きな希望であったと思います。
 あの時代、土佐沖で遭難した少年漁師万次郎は、捕鯨船の船長に助けられ、アメリカに渡りました。
 むしろ、驚くのは、助けてくれたこと以上に、未開の地の、国を閉じて、大きな刃物を二つも腰に差している国の少年を学校に行かせた船長であり、それを鎖国する日本に戻すためにアメリカという国が努力してくれたことです。
 そのおかげて、万次郎はその後、日本の開国、そして、文明開化に尽力するのです。

 そのアメリカ、今、一人の大統領の独善的な振る舞いに揺れ動いています。
 「他に選択肢はない。時間切れだ。」 

 この言葉を最近二度も耳にしました。
 一つは北朝鮮のトップと会談した際のことです。そして、中国からの輸入品に追加関税の検討を指示した際です。
 どちらも、何らかの進展があったかといえば、そうもいえないのです。
 ですから、これは独善的な大統領の言い訳として私には聞こえるのです。

 苦しい言い訳の背景には、4カ月後に迫った中間選挙があります。
 アメリカ国民は、大統領に相当な権限を与えていますが、成果がなければ、大統領をお払い箱にする権利も有しているのです。
 中間選挙で勝利をしなくては、2020年の再選は難しくなります。
 その焦りが、この言葉であると思うのです。

 <民主主義は最悪の政治形態だ。これまで試されたあらゆる他の政治制度を除けばだが。>

 この含蓄のある言葉を吐いたのは、英国首相チャーチルです。
 対独戦を戦い抜き、英雄と奉られながら、しかし、戦後、選挙で首相の座を降ろされます。
 いかなる英雄でも、民主主義というのは有権者の洗礼を受けなくてはならないのです。

 MLBでは7回の裏に、二つの曲が演奏されます。

 一つは、『God Bless America』という曲です。
 選手も観客も、球場にいるすべての人が起立し、脱帽し、この曲を歌い、聞きます。

 「神よアメリカを守りたまえ」と、いろいろな国からやってきて、アメリカで今は暮らし、あるいは、旅をしているものたちが、その曲に敬意を示すのです。
 MLBだけではありません。アメリカでは、学校や軍隊、ボーイスカウトなど人が集まるところでは必ず歌われるものです。

 そして、次に歌われるのが、『Take Me Out to the Ball Game』です。
 この曲のイントロが流れると、それまでの神妙な表情が一転して、皆、和やかな表情になります。

 私、この転換する瞬間がとても好きなのです。
 自分たちが主人公の国家に敬意を表し、それが終わったら、今度は自分たちの楽しむ時間、そのけじめが目に見えているからかもしれません。

 『Take Me Out to the Ball Game』は、誰からも規制されない、自由な空気が、人々を包み込む、そんな曲だと思っているのです。

 だって、そうではないですか。
 映画館でポップコーンを食べたり、野球を見ながら、ピーナッツを頬張り、冷たいビールを飲むなんて最高ではないですか。
 もしかしたら、人類の最高の幸せの瞬間といっても決して大げさではないとさえ思っているのです。

 最高の選手のプレーに声援を送り、贔屓のチームに不甲斐なさがあればヤジを飛ばすのです。
 日頃の鬱憤も、きっと、何処かへ吹っ飛んでしまいます。

 日本時間7月5日の早朝。
 日本は強風に雨でした。
 アメリカ西部時間7月4日の午後。
 シアトルは快晴でした。





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