グラウンドの少女

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大変な被害が出ています。お見舞い申し上げます。頑張ってください。つくばはもどり梅雨もひと段落、酷暑の予報が出ています。昨夕はiPhoneが地震の到来を通知、即、大きな揺れが……、あぁ、無情!


 つまらないことを見ているやつだなんて思わないでください。

 スポーツを見るのは好きなんですが、時に、退屈する時ってありますよね。
 そんな時、私、試合会場でも、テレビ中継でもそうなんですが、試合と関係のないところで、誰が何をしているのかを見るんです。

 選手ばかりではない、審判ばかりではない、裏方というのはどこにでもいるもので、そういう人たちがどんな風に、その退屈な試合の流れの中で、仕事をしているのかを見るのが好きなんです。

 先だって、ロシアでのワールドカップの試合、もちろん、日本チームの試合ではありません。

 日本とベルギーのあの試合は、これまで見たサッカーの試合の中で、1秒たりとも退屈さを感じたことのない試合でした。
 ですから、あれ、もう終わりと気づいて、そこから悔しさが溢れ出てきたことを覚えているのです。
 
 ですから、これは他の国同士のワールドカップの試合のときであったのです。

 両者とも、なかなか得点ができずに、選手たちもなんかダラダラと走って、シュートの威力もそこそこで、なんだかつまらないと思っていた矢先、私の目に入ってきたのは、コートを取り囲む係員の列であったのです。

 皆、一様に、スタンドの方を見ています。
 それも両手を広げるくらいの間隔で人が並んでいるのです。
 コートの向こうに同じ上着を着た人たちがまるで、試合が面白くない、だからそっぽを向いている、まるで集団サボタージュのような具合だったんです。

 昔、上司に言われたことがあります。
 学校で、受験生を集めて、説明会をするとき、その誘導に当たる教師に対して、ポケットに手を入れるな、教師同士が集まって話をするなって、ご指導があったのです。

 うるさいなって、教師になりたての頃、思っていました。

 でも、受験生の親からすれば、この学校に子供を預けて大丈夫だろうかという判断は、校舎に空調があるとか、落書きもなく綺麗な校舎内だとか、あるいは、進学実績がどのくらいなどという数字よりも、子供にじかに接する教師がどうであるかなのです。
 その教師が仏頂面でポケットに手を突っ込んで、近寄り難ければどうでしょう。
 数名の教師が案内誘導もせずに、くちゃべったりしていたらどうでしょう。
 先輩の教師からそう諭されて、私は教師としての道を踏みさずにどうやら来れたことに、今も感謝しているのです。

 だから、これもきっとそのような意図があるに違いないと思ったのです。

 試合も見ずに、スタンドを見つめる彼らは、スタンドからものが投げ込まれたり、あるいは、差別的な言動やサインが出されることを、見張っているのでしょう。
 あれだけ間隔を狭めて並ぶことで、品位を貶めるよからぬことをする人々に威嚇を与えているのです。

 フランクフルトに滞在していた時、ハイデルベルグから駅に戻って、ホームを歩いていたら、サッカーを見て来た人たちが駅舎に溢れていました。フーリガンのように暴れることはありませんでしたが、そういう光景に出くわしたことがないので、少々、危険を感じたのです。

 だって、あちらこちらで大声をあげて、大騒ぎだったのですから。
 一人の腕に刺青をした体躯の大きいドイツ人が、私が歩いているのに気づいて、近寄って来ます。まずいな、困ったなと思っていると、自然、その男と目があってしまうのです。

 すると、あの強面が、突如、破顔、私の手を握って、何やら感謝の仕草をするではないですか。

 あとで聞くと、日本からきたなんとかという選手がゴールを決めて、フランクフルトのチームは勝ったのだと言いますから、それがゆえの破顔感謝であったのだ、やっと気づいたのでした。

 テニスでも、観客を直立不動で見守る光景を見たことがありますから、ヨーロッパではそれが常識なのでしょうか。

 先日、MLBの試合、ヤンキースが圧倒的に優勢の試合でのことでした。

 打つべき人が特大のホームランを打って、投手もきちんと投げ込み、試合は誰が見ても早々と勝利とわかるものとなりました。
 そうなると、これも退屈になります。

 そんな時、テレビカメラが、三塁側の観客席近くのグラウンド内にパイプ椅子に腰掛けている少女をうつしたのです。

 何やら、観客席の白髪の老人と話をして笑っています。
 試合中のことで、テレビがそれをうつすのですから、よほど、微笑ましい何か、訴える何かがあったのだと思います。
 その時、打者のファーボールが、その少女のところに転がって来たのです。
 少女は、それを見事に手にはめていたグローブでキャッチしたのです。
 そして、そのボールをあの白髪の老人に差し出したのです。

 カメラは何故、その二人の和やかな会話をうつし、そこへタイミングよくファールボールが飛んで来たのかは、すべて、偶然のことでしょう。
 なんら演出があったわけではないでしょう。
  
 でも、その自然なスタッフと観客のやりとりに、実は、試合以上に、私、感じ入ったのでした。

 何かあれば大変だと見つめられるよりも、楽しみに来たのだから、スタッフも楽しまなくてはと暢気に振る舞う少女の方が自然であり、一興だと思ったのです。





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