洒落る医師

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鳥も暑いのかしら、そのため、注意力が散漫になっているのかしら。これだけ近づいても、逃げようともしないのです。明らかに、気象はこれまでとは異なっていますね。何をできるわけではないですが、今朝は、朝方24度のつくばです。外の空気がひんやりとしています。


 とある女性が、がんで亡くなったという新聞記事に、自然と目がいってしまいました。しかも、見出しには「腎臓がん」とあるのではなおさらです。

 この女性、腸になんらかの病気があったらしく、その経過観察のため、CT検査を受けたそうです。
 CT検査やMRI検査などの高度な医療検査は、放射線診断医師によって、撮影された画像の「読影」が専門的な見地からなされます。そして、報告書が担当医師に手渡されて、最終診断が患者になされるのです。

 意外に、詳しいねと言われそうですが、この高度な検査、私、定期的にやっているんです。
 高度であるばかりではないんですよ。
 結構な額も請求もされるんです。

 で、この亡くなった女性、放射線医師の報告書では、腎臓がんの可能性ありという記載があったのですが、担当医師はそれを見落としたというのです。
 そして、腎臓に小さくできたがんは次第にその女性の体を蝕み、手のつけられない状況に陥り、手遅れとなってしまったというのです。

 この画像診断報告書の見落としというのは、日本医療機能評価機構による調査だと、最新のもので二年間で三十二件もあったというのです。
 高い金額を支払わされて検査をし、造影剤なるものを注射されて、体が拒否反応に耐えながらやった検査が有効に使われないなんて、怒りさえも感じた記事であったのです。

 今、日本の医療技術では、ファーストステージのレベルで発見されたがんはほぼ完治するといいます。
 もはや、がんは不治の病ではなくなったのです。
 にも関わらず、医師の見落としで命をなくすなんて、やり切れません。

 私も先日、下垂体腺腫でMRI検査、腎臓がんでCT検査を、しかも、両方とも造影剤を入れて、大枚はたいて、検査をしてきたところです。

 腎臓がんの検査は、三年目に入りました。
 五年は経過観察をしなくてはならないのです。

 主治医の先生が、私を診察室に呼び、私の体の断面図をゆっくりと動かしてくれます。
 胃から始まって、腎臓へと、すると、御覧なさい、ここに影がないでしょう、あなた、腎臓とったからねと言います。
 そして、腸、膀胱と次第に下がっていくのです。
 綺麗なものんですと今度は言います。
 どこにも転移がありません。

 ここを読んでください。
 これは画像診断医のコメントですと先生、私に、手にしたボールペンで画面を指します。
 確かに、がんの転移は認められないと記載がありました。
 その時、こんなにわかりやすいところに書いてあるのに、見逃す医師がいるんだと改めて思ったのです。

 あの手術から三年目の私は、今、医師の言葉をいただいて、また、少し、命の時間をいただいたような気がしたのです。
 
 平気な顔をしていても、やはり、検査結果というのは気になるものです。
 私の主治医があなたもいいとしになったのだから、肺の検査はしておきましょうと、検査を勧められ、肺は元気でしたが、腎臓にがんがあると言われた時は、ちょっと、ショックでした。

 だって、そう言われて、ペン先で示された私の体の画像は、本当にまるで「シミ」のようなものだったからです。
 
 最初、医師は、私をからかっているのではないかと思ったくらいなんです。
 本当に、これが「がん」なのか。
 面白半分に、そう、若い医師の訓練のために、二つある腎臓の一つを切除する試験台にされているんじゃなかって、真剣に考えたくらいなんです。
 
 しかし、今の時代に、そんな大それたことをする病院があるわけはないし、親からいただいたこの体の一部を切り取るなんて、世の中には思いもしないことが、実際起こるものなんだと観念をしたのでした。

 私のCT画像を説明してくれた先生が言うんです。

 今ね、犬が患者さんの尿の匂いを嗅いで、その患者さんにがんがあるかどうかがわかるんですよ。これが本当の「犬の検査、つまり、犬査」ですよと。
 キョトンとしていると、麻薬犬がいるんだから、「がん犬」と言うのいてもおかしくないですよね。犬は、患者の心も慰めてくれますからね。これは、「慰め犬」とでもいうんですかねと。

 次回は、半年後に行いましょう。
 私、まだ、転移する可能性があるんですかと、半年後を提案する医師に、真顔で問うたのです。
 ないとは言えません。
 これまでくだらない洒落を連発していた医師も真顔になって言いました。

 ま、しょうがない。
 これも、縁と考えて、二つの身体に宿った腫瘍と対峙して行くしかないと思ったのでした。





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