この人ならざる<もの>たち

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盆休みが始まりました。ご先祖を偲ぶ大切な期間です。心して過ごしたいと思っています。



 私のApple Watchのガラス面にちょっとした傷ができました。

 どこで、どうして傷ついたか記憶は定かではありませんが、腕に年がら年中つけていれば、傷の一つや二つつくものだと大して気にもとめません。
 当たり前のことであり、その傷こそが、それが私のものである証になると思ってもいるのです。

 ところが、先日、卓球のメンバーで恒例の食事会をした時のことです。
 私は、何気に、Apple Watchのガラス面にできた傷をさすっていたのです。
 この時、運悪く私が陣取った席は、あのやかましい女性陣たちのそばでした。その彼女たちが、保護ケースがあるでしょうと言いながら、Apple Watchとは関係ない、自分たちのスマホを、それぞれの人が取り出し始めたのです。
 なんとも豪勢な革張りのケースであったり、華やかな色のおしゃれなカバーであったり、それを私に見せつけてきます。

 なんで、そんなことをするのと私、思わず口にしてしまったのです。

 スマホの画面を守るためよ。
 スマホはみな同じだから、自分のものだとすぐにわかるためよ。
 あなた、おしゃれというものがわからないの。
 ……
 書くもの面倒なくらい、つまらない言い分を展開します。

 その時計だって、きっと、ガラス面を傷つけないように保護するものがあるはずよと、ちょっとIT機器にうるさそうな女性が言います。
 さらに、綺麗にしていれば、下取りの時にちょっとは高く捌けるじゃないなどと言うのです。

 私、捌くつもりなどさらさらないし、下取りに出すつもりもないんだけどって、そして、彼女を私の書斎に連れてきて、歴代のパソコンからiPhoneから全部見せてやりたくなったのです。
 どれもこれも、電源をオンにすれば、きっと起動するはずの代物です。

 そんな女性連の喧騒の中に身を置きながら、私、実は別のことに思いを馳せていたのでした。

 日本人は、自然界のすべてのものに固有の霊が宿ると信じて疑わない民族であることはいうまでもない。
 いわゆる、アニミズムというやつだ。
 だから、道端に転がっている石ころにも、川の流れにも敬意を表して、祀ったりする。
 その精神作用は、極めて自然な流れの中で、無機物にも及んでくるんだ、って。
 そんなことに思いを馳せていたのです。

 そういえば、私たちは、生き物ではない、無機物にもそのアニミズムを発揮していると、その時私思ったのです。

 <おしゃれに部屋を飾る小物たち>というのは、その日の朝の新聞広告に打たれていたコピーでした。
 <つくばにオープン!中古だけど味わいの濃い家具たち>というのは、折り込みの広告の言葉でした。

 何が問題かと言いますと、<たち>という言葉です。

 日本語では、<たち>は人を表す名詞や代名詞に付く接尾語としてあります。
 平安の時代の「公達(きんだち)」のように、若干の敬意を伴う表現でありましたが、今では「ぼくたち」のように自称に付けたり、「犬たち」「鳥たち」のように動物につけたりする言葉ですが、無機物につけるのは、正しい使い方とはいえないからです。

 でも、昨今のIT機器の入った道具を見ていると、おそらく、無機物につけることも自然なこととして認識されるようになったと辞書の記述が訂正されるのではないかと思っているのです。

 だって、無機物である我が宅のいくつかの家電は主人である私に命令、もしくは提案をしてくるのですから、そうなれば、それらは犬以上ということになるわけです。

 鍋が熱くなってきました、火力が弱まります。……(はやく調理なさい!)
 お風呂が後五分で沸きます。……(さっさと湯につかりなさい!)
 距離15.5キロメートル、時間45分、スピード時速18キロメートルなんて、ロードバイクに乗っていても、サイクルコンピューターが私に教えてくれるのです。……(もそっと、気張れ!)

 私は、無機物に支配されて生活を営み、無機物の指示で走行状態を調整したりしているのです。
 人ならざるもの<たち>と、私は会話し、その行動を決していく時代なのだと、そう思うと、ぞくっと背筋に何かが走るのです。

 きっと、近い将来、この人ならざる<もの>たちとの間に、齟齬が生まれ、対立が生じ、軋轢に悩むという事態になるのではないかと懸念するのです。

 だとすれば、私の右腕に巻かれているApple Watchだって、そのうち、私に音声で、傷をつけなさんなと言い出すはずです。
 傷がついても、心配してやらなくては、きっと、何を言われるかわかりません。
 あの喧騒の女性たちのように文句を言い、挙句にアマゾンにアクセスして、勝手に、傷からApple Watch自身を守るカバーを注文するかもしれません。
 
 そんなことを思うと、「あぁ、やだ、やだ」と思うのです。

 今再び、あの喧騒なる女性陣の声が耳に戻ってきました。
 今度は、テーブルに置かれた私の iPhoneSE が丸裸であることを批判しているようです。

 いい加減にしてくれ、ほかに話題はないのかと、思ったのでした。





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縄文と弥生の人々が共存して、互いに文化を交流させている姿を思うことも、時には争いに発展することも、私は、想像をするのです。
さらには、世代間の違いにも思いをいたしたり、文化を異にする外国の地で、思いにふけったりもするのです。
人間なんて、人類の歴史から見れば、この世で活動する期間などわずかなものにすぎません。
しかし、そのわずかな時間でさえ、永遠に記録に残すことも可能なのです。
今回の作品はそうした意図を反映した作品なのです。>

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