ふふふっ、てなもんです

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日常とは異なる空間に身をおくと、人はあらぬ空想の中に埋没します。いや、あらぬ空想を求めて、日常とは異なる空間に身をおくのかもしれません。



 伊豆のちょっと小洒落たホテルでのことです。

 ロビーにも、そして、部屋にも「LPレコード」が飾られて、そこにレコードプレイヤーが置かれていたのです。
 ロビーでは、宿泊していた小さな子たちが物珍しそうに針をレコード盤において、そのことで音が出ることを面白がっていました。
 時には、針を滑らして、母親に叱られて、しょんぼりしていました。

 我が宅にも、随分と聴くことのできなくなったレコード盤があります。
 九割がたは、あの「B」のものです。
 でも、もはや、我が宅にはそれを聞くための道具がないのです。ですから、それらは書架の一角に束ねられて置かれているのです。
 
 ホテルのそのようなスタンスを知っていれば、いくつかのレコードを持って来たのにと、無料の美味しいコーヒーをロビーで飲んでいたのです。
 
 そんな折、ロビーに、若い女の子たちがやって来ました。
 皆、背がすらっとして、まるでモデルさんのようです。お顔も小さく、足が長いのです。着ている服も、どこかセンスがあります。
 
 「すみません」と、そのお嬢さんの一人が私に声をかけてくるではないですか。
 「カメラのシャッターを押してくれますか」というのです。
 はいはい、たやすいことでございます、こんなお綺麗な方々をカメラのレンズを通してじっくり拝めるなんて、なんと幸運なことなのかと、もうこちらはウキウキです。

 ところが、手渡されたカメラ、iPhoneでも、私が頭にとどめているカメラでもないのです。
 丸い、ピンクの蝶リボンをした豚、のような形をしているのです。

 「チェキって言うんです。すぐにプリントができるんです。豚さんではないですよ、キティちゃんですよ」

 一番背が高く、一番お顔の小さい、短髪の女性が、私の心を見透かしたように言います。
 これって、昔、使ったことのある、いわゆる「インスタントカメラ」ってヤツだと、私思ったのです。
 お嬢さんたちに問いますと、これがおしゃれであり、デジタルにはない質感を感じられるって言うんです。

 きっと、なんでもかんでも、デジタルで済ませる時代だからこそ、撮った写真をプリントして見られることに新鮮な何かを感じ取っているのだと思ったのです。
 
 なら、彼女たち、iPhoneで写真を撮っていないかといえば、そうではないのです。

 しきりに、おしゃれなホテルのロビーの小物をiPhoneで撮っては、両方の指を動かし、何やらしています。
 きっと、インスタにでも自分の今撮った写真をアップしているに違いありません。
 他の女の子たちが、自分たちのiPhoneを覗き込んで微笑んでいますから。

 レコードに、インスタントカメラと、なんだか、旅先のホテルで、時間が戻ったような錯覚を覚えました。

 いや、ファッションが、時に、時代を回顧するように、私たちは、昔を懐かしむようになっているに違いないと思ったのです。
 それも、その時代を知っているものではなく、その時代を知らないものたちが、その時代に憧れて、その時代の「風」を受け止めるのです。

 このお嬢さんたちは、きっとこのホテルにレコードプレイヤーがおいてあることを知って、泊まっているに違いないと私思ったのです。
 私のように、適当に泊りにきたのではなく、入念に調べて、自分の嗜好にあったホテルに泊まり、その時間を過ごしてきたのです。
 そして、ノスタルジックな雰囲気とひと時の時間を堪能したに違いないのです。

 今、私の興味の対象は、カヤックをどうするかと言うことです。

 まだ、購入するかどうかは決めてはいないのですが、資料は集めているのです。おかではロードバイクで、水上ではカヤックで、自らの足を動かし、腕を動かし、動きまわることを意図しているのです。
 私のワーゲンの屋根につけた載台に、ロードバイクとカヤックを載せて、あちらこちらへと出かけて、楽しくやれたらと思っているのです。

 お嬢さんたちの回顧とは、様相が異なりますが、若い頃、十分にできなかったことを、今、やろうとするのは、これも回顧であると私思っているのです。
 そうそう、マッカートニーの来日公演が決まったと言います。
 もちろん、私、超速チケット購入の抽選に応募しました。
 
 これも、若い頃に十分にできなかったことを堪能する、私の回顧だと思っているのです。

 私より先にホテルを出ることになったあのお嬢さんたち、私にさよならと言ってくれました。ですから、私、思い切って、あなた方はモデルさんですかと問うたのです。
 そしたら、三人して、ケラケラと笑い声を立てて、手を振って、去って行ったのです。

 まぁ、いいか、旅の途中の些細な出来事だと思い、足を組み直した際、ふと、テーブルに目が行きました。
 みると、そこに一枚の正方形の写真が、そこには、iPadを見ている私が映っていたのです。

 ふふふっ、てなもんです。





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Author:nkgwhiro
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《 11/13 🍁 Tuesday 》
 
🦅ただいま、<Puboo!>にて、『一万年の憂愁』を発信しています。

<時の感覚というのは、実に不思議です。
縄文と弥生の人々が共存して、互いに文化を交流させている姿を思うことも、時には争いに発展することも、私は、想像をするのです。
さらには、世代間の違いにも思いをいたしたり、文化を異にする外国の地で、思いにふけったりもするのです。
人間なんて、人類の歴史から見れば、この世で活動する期間などわずかなものにすぎません。
しかし、そのわずかな時間でさえ、永遠に記録に残すことも可能なのです。
今回の作品はそうした意図を反映した作品なのです。>

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