夏の 九回の攻防

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好きなんだな、こうしたオブジェが。蒸気機関車が郷愁を誘うように、帆船も同じような、いや、それに加えて、冒険心も刺激されて、しかも、それが海に面して備えられている。素敵な光景であると思うのです。


 夜、ちょっと開け放たれた窓の向こうから、鈴虫の声が、そして、吹き込んでくる夜風に、ちょっと寒いなと感じる日がこのところ続きました。

 そうなると、あのバカみたいな暑さの日々を懐かしく思うのですから、人間というは実に勝手なものです。

 よくよく考えてみると、つくばあたりでは、むせ返えるような夏というのは、本当にちょっとの間であると実感するのです。
 それに比べ、筑波おろしの北風に身をすくめる期間の長いことに、気づくのです。

 あの長い冬が終わりを告げる頃、菜の花の咲きはじめたのを知り、心を躍らす日のあの華やかさ。
 そして、秋も深まり、木々の紅葉に圧倒される日々。

 それらに比べて、夏の終わりというのは実に寂しいものです。

 暑さに嫌気もさして、今年は、さらに、テレビで、激しい運動はするなとか、冷房をケチるなとか、水を飲めとか、盛んに言われて、うんざりしていたのに、朝晩の気温が20度前後になるにつれて、寂しさが一挙に増してくるのです。

 今年の夏は、突然の暑さを伴ってやってきました。
 そして、これまでにない暑さが連続してやってきて、40度という驚異的な数値を、私のワーゲンの気温計は何度も指し示したのです。

 以前、釣りの帰りに、今日は暑いなと思って、温度計をみると、35度くらいであったのが、一気に、今年は、39度、40度と針が振れるのですから驚きです。
 この世の終わりかと思わせるような暑さであると錯覚するのも無理からぬことであったと今振り返って思うのです。

 今日は、夏の甲子園の決勝戦が予定される日です。

 午後、決勝戦が終わり、優勝チームが歓喜に沸く頃、私は急に寂しくなるのです。
 学校に勤めていた頃は、お盆休みから継続して休暇をとって、それが終わるのがこの日です。
 あぁ、夏休みが終わる、明日から、後期夏期講習だと、急に仕事のことが心に押し寄せるのも一因であったと思います。
 
 決勝戦は、いつも、どういうわけかあっさりと勝負がついてきたように思います。
 どうしてだろうかと思うのです。
 高校野球の醍醐味である九回の手に汗握る攻防をあまり見ることはないのです。

 メジャーであれば、優勝を争う特別なゲームを除き、大差がついていれば、それを逆転してゲームをひっくり返す意欲など、一流のプレーヤーでさえ見せてくれません。
 それより、明日のゲームに向けて、いい負けにこだわったりがせいぜいです。

 ところが、高校生は違います。

 差が4点あれば、満塁ホームランで同点だくらいの気持ちがひしひしと伝わってくるのです。
 5点であれば、まずは一点を取って、それから満塁ホームランだくらいの気持ちなのです。

 一塁ベースに頭から突っ込んでいくあの闘志、壁に激突するのも恐れずに白球を取りに行く外野手、足をつりながらも懸命に走り、垂れる汗も拭わず、ただ一点を見つめて、我が人生極めたりの形相でゲームにのぞんでいるのです。

 今年のこれまでの試合でも、随分と九回の攻防で、ゲームがひっくり返りました。
 満塁逆転ホームランを打たれ、呆然とし、自分たちが負けたことを受け入れられない表情をする選手の表情は、まるで、最高の人間ドラマを見ているかのようでした。

 人生は諦めてはならない、最後の最後に、ドラマがある、そのことを彼ら高校生から教わるのです。
 
 人生の中で、9回土壇場の瀬戸際に追い込まれることだって、誰にも一度や二度はあるのです。
 しかし実際、その瀬戸際の人間には、あの高校野球の場面は浮かびません。
 それどころではないからです。
 それが「瀬戸際」というものです。

 しかし、あの夏の日の諦めなかった精神をたたえた人間の心には、強い心持ちが宿るのです。
 その時は、気がつかなくても、瀬戸際で足掻く慌ただしさの中で、その強い心持ちが働いていくのです。
 そして、一件落着した時、それがたとえ、好ましくない結果であっても、あの潔さ、あの真剣さで己を振り返ることができ、再生へと一歩を踏む出すことができるのです。

 本当かと問われる人がいれば、私は、本当だと言えます。
 だって、現実に、それは私が体験してきたことなのですから。

 それにしても、私、何とも言えない寂寞とした朝を、今感じ取っているのです。
 まさに、夏の九回の攻防の刻であると、夏が去っていくことを実感し、寂しく思っているのです。





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『天皇陛下の親指』



日々の生活の中で、ともすると、何気に見過ごしてしまうこと、そんなことにもちょっとした注意を向けてみますと、そこには奥深いものがあることことがわかります。
コアラの国に暮らす人々との関係を通して、私は飽きることなく、その奥深いものを感じ取っているのです。
そして、その奥深いものが、私が暮らす日本という国を見つめなおさせてくれるのです。
何気に見過ごすのではなく、意図して、身の回りのありようを感じ取っていくのです。
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