そこには過去と未来が混在していた

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いかなる森も、林も、鬱蒼とした竹叢には勝てません。
そこには、得体の知れない何か、そう、魂魄が漂っているのです。
だから、私はそこへ入るのをためらうのです。



 8月も終わり、数日経った今頃、カレンダーを9月のページにすげ替えました。

 なんとも呑気なことです。
 家で仕事をしていると、そんなこともできなくなるんだと、いや、それは尋常でない暑さのせいであって、精神的な緩慢さが因ではないと自己弁護したりしているのです。

 家中のカレンダーをすべて9月にしたとき、いつだったか、そう、まだパソコンがさほどに社会に浸透していない頃のことでした。

 取手の学校の同僚でイギリス人の英語教師が、どこを探しても、9月始まりの手帳が日本では売られていないとぼやいていたことを思い出したのです。

 そんなのあるわけないだろうと一笑に付したのですが、彼曰く、イギリスでは9月に新学期が始まるから、普通に9月始まりの手帳が売られているというのです。
 日本は4月に学校が始まるが、4月始まりの手帳など聞いたことがない。
 手帳はいつだって、その年の始まり、1月1日から始まるのが普通だと偉そうに、私、彼にのたまっていたのです。

 ところが、最近は、4月始まりの手帳も、9月始まりの手帳も売っているというのをちょっと小耳に挟んだのです。
 システム手帳ではなく、一冊のれっきとして手帳としてです。
 
 現代社会では、スケジュール管理は重要な項目のひとつです。

 特に、働き盛りの人間、多くの人を対象に仕事をしている人たちは、このスケジュール管理ができないといっぱしのビジネスマンとは認められません。
 秘書さんがいるようなご身分になれば、その必要もないでしょうが、多数の人たちは、自らでスケジュール管理をして仕事をこなしているのです。
 スケジュール管理は、自己管理にも通じます。
 ですから、職に応じて、いろいろな月日で始まる手帳があってしかるべきであると思ったのです。
 
 人と多く会っていれば、良いことばかりではありません。
 時には、嫌なこともあります。
 そんな時、手帳に、不平や不満、もっと的確に言えば、悪口雑言を書き連ね、それで溜飲を下げることも可能です。
 仕事の進み具合を記録したり、敬愛すべき人物に出会った時の印象を記したり、そんな時にも手帳は大きな役目を果たすのです。

 つまり、手帳は「日記」にもなるというわけです。

 日記とは、その多くの記事が過去の出来事になります。こんなことがあった、こういう人がいたと書いていくものです。
 ところが、スケジュール管理は、未来の出来事になります。
 夕方は取引相手と食事、三日後は、契約の書類を用意、一ヶ月後にはなになにと未来のことが綴られます。

 これって、ちょっと面白いことだと、私思ったのです。

 一冊の手帳に、過去と未来が混在しているんですから、それも、あやふやな過去や未来ではなく、おおよそは、良くも悪くも自らの体験であり、近々確実に実行される出来事なのですから、なおのこと、面白いと思ったのです。

 さらに、もっと、突きつめて行くと、会社なり学校なり、公のスケジュールの中に、私的なものも書き込まれて行くのですから、その人の歴史そのものがこの手帳には記載されて行くことになります。

 そう思うと、一冊の手帳にこだわることがいかに重要であるかがわかるのです。

 今頃になって、カレンダーのページをめくる作業をしながら、9月始まりの手帳を探すエピソードを思い出し、その重要性に気づくのですからおかしなもんです。

 そんなことを思っていると、私、その過去と未来の混在を、複数の仕方で行っていた自分にも気づくのです。

 私は今、仕事も、個人の管理も、ほとんどをデジタルで処理しています。
 ですから、スケージュール管理は、Macの「カレンダー」と「リマインダー」というソフトで行っていますし、日々の記録も、Macの「メモ」を使っています。
 教員時代は、アナログの手帳も併用して、場に応じて、使い分けていました。
 でも、今、家で仕事をするようになって、アナログの手帳は机の引き出しの中で余生を送るという具合になってしまいました。
 
 複雑なことをしなくても、自分のスケジュールが管理でき、さほど多くの人とも会うことがなくなり、随分とスッキリしましたから、それで十分なのです。

 さて、人から圧力も受けずに、のんびりと日々を送り、自らに課した仕事を果たしているのですから、当然、よそ様の悪口雑言もそこにはなく、スケジュールといえば、一週間後に、GOKUがオーストラリアから成田にくるから、迎えに行ってやり、40日の孫たちとの慌ただしい生活を送り、あそこに行って、ここに行ってと、「リマインダー」には記載されています。
 おや、GOKUらが帰った後には、マッカートニーのコンサートも入っている。
 カヤックのことを調べるためのとある業者との面会も入っている。

 そんなリマインダーを見ていると、私の未来、今までになく、充実した内容であることに、私は密かに満足するのです。
 私の過去の記録としての日記を綴ったメモも、これもまた、誹謗中傷の一つのかけらもなく、満足しているのです。



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《 5/24 🏇 Friday 》
 
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『天皇陛下の親指』



日々の生活の中で、ともすると、何気に見過ごしてしまうこと、そんなことにもちょっとした注意を向けてみますと、そこには奥深いものがあることことがわかります。
コアラの国に暮らす人々との関係を通して、私は飽きることなく、その奥深いものを感じ取っているのです。
そして、その奥深いものが、私が暮らす日本という国を見つめなおさせてくれるのです。
何気に見過ごすのではなく、意図して、身の回りのありようを感じ取っていくのです。
「私小説」という言葉が、日本にはあります。
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