メタセコイヤの並木路に吹く風

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石垣の一箇所に石を埋め込まず、仏様を納めるなんて、なんて素敵な所作だろうかといつも感心しているのです。
そんな家がご近所にあります。
石というのは、人類が手にした未来へと意思をつなげる最初の材料です。
この宅のご主人は、きっと、己だけでなく、周りにもご利益があるようにという思いなのでしょう。
ここを通るときは、そっと、一礼をするのを常としているのです。



 私はトレックのロードバイク、マドン号に乗っています。

 レースに出るわけでもなく、徒党を組んで一列で同じスピードで一般道を走るわけではありません。ただ、一人で好き勝手に、あちらこちらへと出かけて、「走り」を楽しむ、言うならば、クルージング派とでも言うべき自転車乗りなんです。

 その一人好き勝手に走る自転車乗りが、先だっては、一人のあまりに若いマウンテンバイカーと二人で、つくばの街を走って来たのです。

 実は、流山に住む一番上の孫に、トレックのマウンテンバイクを買ってやっていたのです。

 この子には、幼稚園の時に、トレックの子供用自転車を買ってやって、背丈が伸びるのに応じてサドルを高くしてやり、それに乗っていたのですが、弟がその黄色のトレックを欲しがり、兄さんとしては、それを譲ることも多くなり、それに、次第に背丈も伸びて来て、その自転車が随分と小さくなってきていたのです。

 だから、その自転車を弟に譲り、自分はギアのついた大きな自転車が欲しいんだと、夏休みにつくばの我が宅に一人で泊まりにきて、わたしにそっとそう言うのです。

 もともと、そのつもりでいたので、早速、トレックの店に出かけて、マウンテンバイクを買ってやったのです。

 サドルとペダルを調整してもらい、そのマウンテンバイクをワーゲンの屋根のキャリアに載せて、家に戻ってくるなり、すぐに乗りたいと言うのです。
 当然のことです。
 私が見ても、かっこいいマウンテンバイクです。
 ですから、私もマドン号を出して、二人で早速クルージングに出かけたのです。

 いつもは、ロードバイクのスピードをあげて、サッと通り過ぎる街を子供の安全を確保しながら、ゆっくり目に走って来ました。

 あんな子供でも、10キロぐらいの距離は何の苦もなく走るのですから大したものだと感心をしながら、後ろから、大きな声を出して、停まって左右確認とか、停まったらちゃんと足をつけてとか、右手を下に差し出し、手のひらを後続に見せて左折だと、私は声を出しまくります。

 その間にも、ギアをいじって、ペダルの感触を味わっているのですから、この子、なかなかやるなと思いながら、その日のクルージングを終えたのでした。

 翌朝、私が早朝の一仕事を終えると、この孫、起きて来て、朝ごはんを食べたたら、今日はもっと遠くへ行こうと私をせっつきます。
 この日は、都合のいいことに、猛暑もひと段落、昨日のような頭の毛が焦げるような太陽の照りがありません。
 西にある大通りに出て、国土地理院前を通って、つくばの隠れたロードバイカー<専用>のアスファルトの敷かれた農道、アグリ・ロードなんて勝手に呼んでいるのですが、そこを二人で追いつ抜かれつのレースをしたのです。
 
 まだ、稲の収穫も始まらず、よって、農業用の車も走っていないつくばのアグリ・ロードを心地よい風を浴びて走る気持ちは爽快そのものです。
 まして、この日は、一人ではないのです。
 孫が一緒で、懸命に私に挑んでくるのですから、楽しさは倍増です。

 途中、「一本松」とこれも私が勝手に呼んでいる三体の地蔵様が鎮座する芝ばたけのど真ん中にある空き地で一休みします。
 私、この孫に、しかるべき年齢になったら、船舶免許も取るんだぞと声をかけました。

 今年、釣りに一度連れて行き、来年あたりは霞ヶ浦で私の船に乗せてやろうと考えているのです。そうすれば、私の船は、この子に引き継がれることになります。
 この子に、私と同じ血が流れていれば、きっと、エンジンを新しくしたり、キャビンを綺麗にしたり、船を沖に出す楽しさもわかることのだ思うのです。

 もちろん、孫の返事は、「取る」と言うものでした。
 
 休憩を終えて、西の大通りに戻り、今度は筑波大学構内を走ります。
 バスが走り、学生の車も走りますが、構内は30キロ制限です。どの車もきっちりとそれを守りますから、さすが筑波大学です。
 前を行く孫は、今度はあたりをキョロキョロとして、車を気にかけているようですが、歩道を走ることは許さず、車道を堂々と走るよう言いました。
 子供というのは素直です。
 最初、おどおどしていたのが、堂々と走るのですから大したものです。
 
 対向車線を一人のおばさんがママチャリに乗って走って来ました。
 ちょっと大きめのマウンテンバイクに小柄な男の子が乗っているその姿を微笑ましく見ながら、その後ろを走る私に頭を下げて、羨ましそうに通り過ぎでいきます。

 その時、メタセコイヤの並木路に、一陣の風が心地よく流れていったのを、私は感じ取ったのです。



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縄文と弥生の人々が共存して、互いに文化を交流させている姿を思うことも、時には争いに発展することも、私は、想像をするのです。
さらには、世代間の違いにも思いをいたしたり、文化を異にする外国の地で、思いにふけったりもするのです。
人間なんて、人類の歴史から見れば、この世で活動する期間などわずかなものにすぎません。
しかし、そのわずかな時間でさえ、永遠に記録に残すことも可能なのです。
今回の作品はそうした意図を反映した作品なのです。>

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