柔よく剛を制すと言いますが……

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夕刻の日差しがバルコニーの向こうの林の中に、これでもかと差し込んでいました。
赤松の幹をさらに赤く染め上げています。
奥の木々を明るく照らしています。
ふと、こんな光景、この日が見納めだと思ったのです。
だって、秋がすぐそこにきていると、察していたからです。
あの狂気に近い暑さも、喉元過ぎれば、妙に懐かしくなる、気ままな人間の感情です。



 格闘技では、「小よく大を制す」とよく言います。

 体の小さいレスラーが筋肉隆々とした大柄の悪役レスラーを奇抜な技で押さえ込んだり、あるいは、小兵と言われる力士が大きな力士を土俵際でうっちゃるのを見ると、誰もが、拍車喝采をします。

 柔道では、「柔よく剛を制す」と言います。
 体が小さいがゆえに、力ではかなわなくても、技を磨き、知略では勝てる、そんなことを伝えてくれて、頼もしい言葉として、私たちは認識しているのです。
 特に、日本人は体が小さい民族です。
 ですから、この言葉は日本民族を勇気付ける唯一無二の言葉でもあると思っているのです。
 
 さて、国連加盟国の中で、国土最小三ヶ国といえば、第一位がバチカン市国、第二位がモナコ公国、そして、第三位がナウル共和国です。バチカンや、モナコは、マスコミにも取り上げられて、よく耳にする国ですが、ナウルという国は、はて、どこにあるのかと頰に手を当ててしまいます。
 調べてみますと、オーストラリアからハワイに向かって飛んでいって程なくのところにある島嶼国です。
 人口は一万人ちょっとの、本当に小さい国です。

 ところが、その極めて小さい国が、人口11億の国に、いま、喧嘩を売っているのです。

 「他者から尊敬を得られる者は、品位をもって振る舞う者のみだということを理解すべきだ」
 「大国であれ小国であれ、一国は品位と尊厳をもって行動しなければならない」
 そんな風なことをまくし立てて、私など溜飲を下げているのです。

 このことに関して、さまざまに情報が錯綜していますが、おおよそ、次のような経緯であったのではないかと思われます。

 ナウルが持ち回りで開催していた「太平洋諸島フォーラム」という会議での出来事です。
 オブザーバーとして出席していた中国の杜起文特使が、気候変動について、実に長々と演説をぶっていました。これでは、太平洋島嶼国からやって来た代表者のスピーチに影響が出てしまうと、議長であったナウルのワガ大統領が、杜起文に対して、演説をやめるよう言ったのです。
 そこで、杜起文が反論し、二人は言い合いになったというのです。

 この衝突には実は前段がありました。

 中国代表団がナウル入国の際に一悶着あったのです。
 ナウルは、台湾と国交を樹立し、中国とは国交がありません。ですから、外交旅券での入国を拒み、一般旅券で入国するよう要請をしたのです。
 ナウル外交官は、中国が主催する国際会議では、そうしているというのです。
 
 しかし、鼻っ柱の強い中国代表団は、それを受け入れずに、よしみを通じる国に、手を回して、我を通したのです。
 国際会議の場で、ワガと杜起文は強い言葉で応酬しあって、結局、杜起文は会場から自ら尻をまくって出ていったというのです。

 おぉ、このようなことがあったのかと、私は、目を丸くして、これら一連の記事に目を通したのでした。

 そして、またまた、中国外交部のあの見目麗しき華春瑩報道官が噛みつきました。
 国際会議での慣例を顧みず、中国代表団の演説を遮ったと非難したのです。
 さらに、「ナウルにご忠告申し上げる。大局を見極め、過ちを正し、歴史の潮流に逆行するようなことを続けてはならない」と、まるで歴史なるものは中国のためにあると言わんばかりのような高飛車な言葉で批判をしたのです。

 11億の人民を牛耳る中国政府に対して、1万の国民しかいないナウルの代表者であるワガも黙っていません。
 「いや、ツバルの首相が話そうとした際に、中国の代表が発言を要求してきたのだ」
 「中国の特使は非常に傲慢であった。島の国の人間は余計な口出しをするなとまるでいじめっ子のようだった」と非難したのです。 

 挙句に、中国は我々太平洋の島々の友人ではない。自国の目的のために我々の島を必要としているだけだにすぎない、誰であれここに来て、我々に指図すべきではないと、バッサリと言い放ったのです。
 さらに、今回のことで中国に謝罪を要求するにとどまらず、この問題を国連に持ち込む考えも示したのですから、痛快です。

 ですから、私など、溜飲を下げた次第なのです。

 が、果たして、この1万の小国ナウルに味方する国はあるかしらと、少々不安になったのです。
 だって、日本の新聞はこの一件をさほど取り上げてはいません。
 アメリカだって、CNNがオーストラリアの記事を流しているにすぎないからです。

 「小よく大を制し柔よく剛を制す」の言葉通りにいくナウルの大統領の行動ですが、「柔能く剛を制す」をという言葉には、実は続きがあるのです。

 「剛よく柔を断つ」という言葉です。

 これがセットになって、一つの言葉としてあるのです。
 昔の人は、正論としての「剛よく柔を断つ」を念頭に、「柔能く剛を制す」と言うこともありうることを知らしめているのです。

 力のあるものがその世界を支配するのは当然であり、それは、21世紀の今も、私たちの世界で厳然としてあるものです。
 しかし、知恵を働かせ、それに対抗することもできるとも述べて、現実にそれが可能なのも疑いようのないことなのです。

 はて、小国ナウルが大国、いや、強国の中国に、「柔能く剛を制す」で立ち向かっていけるよう、私、そっと注目しているのです。



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