そっと教わった

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明らかに太陽の光が弱まったと障子に映るすだれの影を見て思うのです。
あの強烈な陽射しはある日突然やって来て、人々を恐怖のどん底におとして去っていった。
そして、今、柔らかな陽射しがぶどうの恵みを与えて、茂った葉を映していると。



 毎年毎年、私たちの国土は災害に見舞われます。

 それは、けっして怨霊の仕業などではありません。私たちの国土が、そうした地盤の上にあり、気象の中にあるからなのです。
 それが避けようにも避け得ない厳然たる現実なのです。

 いかに、科学文明が発達しようとも、自然の力を制御することは至難の技です。
 だから、私たちは災害に備え、心の準備をして、一旦、それが起これば冷静沈着に行動することが求められるのです。
 とは言っても、実際、あの震度6弱を体験し、その後に何度も続く、大きな揺れを体験すると、茫然自失、生きる力も失せてしまう、そんな感じになるのです。

 ですから、この夏、立て続けに起きた災害に対して、その報道を目にするたびに、私は、あの大きな揺れと、その後のしばらくの困難だった生活を思い出してしまうのです。

 そうそう、あの時、学校に勤務していた私は、こんな噂を耳にしたのです。
  それは、実際の災害よりも恐ろしい、いや、腹立たしいことと思ったのを今でも覚えています。
 
 つくばの公務員宿舎の人たちが、家族を関西にいかせていると噂は言うのです。

 生徒の誰かが欠席をすると、彼はつくばの公務員の子、だから、原発がとんでもないことになっていることを知って、危険なつくばから遠く離れた関西に行った、というものでした。
 欠席をするならば、親から電話連絡が入るし、そうでなければ、学校から電話連絡をするので、そんなことはないことはわかるのですが、まことしやかにそのような噂が広がり、ただでさえ、地震災害で気落ちしているのに、追い打ちをかけるように、よこしまな噂を流して喜ぶ輩がいるのです。

 今回の北海道地震でも、自衛隊が地響きからさらに大きな地震が来ると予測していると、そんな噂が流れて、忙しく働いている市役所に問い合わせが集中したというのです。
 さらに、SNSでそれが拡散し、噂が噂を呼んで、人々はパニックになったというのです。
 今年の6月の大阪北部地震でも、ツイッターに「日本を訪れている外国人は、地震に慣れていないから犯罪をする」という情報が載ったということです。

 誰かが、人の気持ちを弄ぶことを喜ぶ輩が、そうしたありもしないことを流して、面白がっているのに違いないのです。
 
 日本には「野次馬根性」という言葉があります。
 世の中で起きるなんらかの事故や事件、それが起こった時に、面白半分に騒ぎ立てる輩のことです。
 浅はかな興味を示し、手助けするわけでもなく、遠巻きにして、囃し立てるのです。
 そればかりではなく、友人知人誰彼構わず、大げさにものごとを伝えるのです。

 それは、人間に備わった、一種の病のようなものです。
 人間には誰にも、ものごとを大げさに捉え、嘘をつく癖があるのです。
 だから、人間は、そうした行為が良くないことであるとして、蔑みの念を持って、野次馬という言葉を使って、それを制してきたのです。
 
 しかし、SNSなどでそれをやられると、災害で心神耗弱に陥っている人間には、それこそが真実であると思ってしまうのです。

 こんなニュースもありました。
 関空に閉じ込められた8千人乗客のうち、中国人は、中国領事館から派遣されたバスで救い出された。台湾の人も、自分は中国人だと認めれば、救ってやったというものです。

 事実は、あの時、多くの旅行者は対岸の泉佐野駅まで輸送され、そこから大阪市内に向かって行ったのですが、中国人旅行者だけは、混乱を避けるため、泉佐野市内のショッピングモールで降ろされ、そこで中国側が用意したバスで大阪市内に向かった、というものです。

 そのことが、どうしたことか、中国側が優先的に対応して、自国の旅行者を救出したとされたのです。

 これらの噂は、中国の公的シンクタンクが関与するニュースサイト「観察者網」でなされたものです。SNSへの投稿を引用する形で情報を発信した周到な中国政府関係者の工作活動であると考えられます。

 で、これにより、一体いかなる混乱が生じたのか、中国人に中国は偉大な国で、自国民を守り通すことを遠回しに言っただけで実害などないという人もいるかと思います。
 でも、台湾では、多少とも混乱があったのです。
 大陸の自国民を守る周到な対応があったにも関わらず、台湾政府は何もしていないと批判が起ったのです。
 国交のない日本には台湾は大使館をおけません。ですから、台北駐日経済文化代表処が、大陸側が空港にバスを乗り入れたことはないとSNSで発信をし続けたのです。

 こうなると、フェイクニュースなどという軽口ではなく、国家転覆にも繋がりかねない重大事であるということになります。

 私の母がたの祖母が私にそっと語ってくれたことがあります。
 この納屋に、ばあばは、朝鮮の人たちをかくまったことがあるんだよ。怖かったよ。でも、かくまってやらなければ、あの人たち殺されていたからね。

 そんな話です。
 茅葺の家を立て直すために、納屋を壊す、その時、片付けを手伝っていたときのことです。
 関東大震災の折、デマが飛び、日本人が自衛団を組織し、朝鮮の人を殺害したというのです。
 どうやら、それは本当らしく、その中、私の祖母は、勇気を持って、人として正しいことをしたのです。

 よこしまな心を持った人間に左右されないもっと広く強い心を持つことを私はそっと教わったと思っているのです。



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