高尚なる趣味人

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 ほお紅さした乙女にも
 紅いトサカの鶏にも
 三角帽子かぶったピエロにも
 そして
 街を歩くおばはんにも
 僕には
 見えるんだ




 重巡インディアナポリス、空母レキシントン、戦艦フッド、そして、武蔵。

 これだけ名前を挙げて、それが、一人の裕福な、そして、高尚な趣味人の男によって、発見された沈没艦であるとわかった人は、それもまたよほどの趣味人だと推測をいたします。 

 インディアナポリスは、日本に投下する原爆をテニアンに輸送した船で、昭和20年7月30日に、日本海軍の潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されました。 
 レキシントンは、世界初、空母同士の海戦として名高い珊瑚海海戦で、日本海軍航空隊に沈められたアメリカ海軍の空母です。1942年5月のことでした。

 前年の5月に、フッドは、デンマーク海峡海戦で、あのビスマルクの砲弾を浴びて沈んだイギリスの戦艦です。
 そした、シブヤン海でアメリカ軍の航空攻撃で沈んだ武蔵と、この裕福で高尚な趣味人ポール・アレンは、これらの艦船を発見してきたのです。

 武蔵が発見されると、日本では大騒ぎになりました。
 NHKなど、発見の際のビデオを手に入れて、特番を作ったくらいですから、やはり、沈船というのは、どこかロマンがあって、しかも、それが軍艦であれば、歴史的意義も加味されて、興味は尽きないということになります。

 ボノム・リシャールという艦艇があります。

 アメリカ海軍の強襲揚陸艦ワスプ級の第6番艦です。
 強襲揚陸艦とは、言うならば、小型空母のことです。アメリカは、原子力空母を中心に置いた空母打撃群をつくって、世界の海のいたるところに置いていますが、その大型空母を区別するために強襲揚陸艦と名付けているのです。

 ボノム・リシャール、不思議な名前です。
 リシャールは、フランス語読みで、英語では、リチャードになる、そんな名前なんです。

 1779年9月23日。

 アメリカは独立戦争のまっだ中にありました。
 場所は、北海に面するイギリス東部フランボロー岬の沖合いです。

 まだ、国力のないアメリカはフランスから商船ボノム・リシャールの供与を受けて、大英帝国が誇る最新鋭戦闘艦セラピスと砲撃戦を展開することになったのです。

 ボノム・リシャール艦長は、かの有名なジョン・ポール・ジョーンズです。

 レッド・ツェッペリンのベーシストではありません。
 独立戦争の英雄で、その名は、今も、アメリカ海軍アーレイ・バーク級イージス艦に残されています。しかも、この最新鋭イージス艦に与えれた任務の一つが、この初代ボノム・リシャール捜索であったのですから、アメリカのこの艦艇に対する思入れというのがわかるというものです。

 ちなみに、この時、フランボロー沖で対峙した両艦は帆船です。

 ですから、この時の海戦は、接近して、大砲を打ち合い、時には、兵士が相手の船にとびのり、白兵戦を繰り広げる壮絶な戦いを演じるのです。

 この日もセラピスの18ポンド砲弾がボノム・リシャールに命中、デッキは血の海となりました。セラピスは、降伏勧告の旗を掲げますが、ジョン・ポール・ジョーンズは丁重に断り、戦いを挑みます。

 互いに接近、ボノム・リシャールのマストから、一水兵が放り投げた手投げ弾が、セラピスのデッキを跳ね、幸運にもそのうちの一つが下層デッキに落ち、そこにあった火薬に引火、セラピスは火災を起こします。
 混乱するセラピスにボノム・リシャールから兵士たちが飛び移り、セラピスはあろうことか、旧式の商船との有利な戦いで降伏してしまうのです。

 ジョン・ポール・ジョーンズはセラピスを乗っ取り、それを自分の船としたのです。
 なぜなら、ボノム・リシャールは18ポンド砲弾をあまりに受けて、もはや軍船としては役立たなくなってしまっていたからです。

 ボノム・リシャールは、アメリカにとっては、日本で言う大和に匹敵する艦艇です。ジョン・ポール・ジョーンズは、連合艦隊司令長官山本五十六といったところでしょうか。
 ですから、今も、アメリカ海軍の強襲揚陸艦にその名を止め、あえて、英語読みにはせずに、供与してくれたフランスに敬意を評して、フランス読みにしているのです。

 そのボノム・リシャール、海底に沈むその艦影が発見されたと言うのです。
 昨年の暮れのことでした。

 世界には、三つの誇るべき海軍国家があると、私は思っているのです。
 それが、アメリカ海軍、大英帝国海軍、そして、日本海軍です。

 イギリスは、第二次大戦後、誠にみすぼらしい限りですが、七つの海を牛耳った栄光の歴史を背負っています。ですから、戦力を縮小したとは言え、侮れない心意気を今でも持っています。
 フォークランドでの戦いを見てごらんなさい、あの戦いぶりを。

 日本海軍は、ものの見事にアメリカによって、ハルゼーによって、壊滅をさせられました。しかし、悪しきものを捨て、良き伝統を生かした海自が、その後を継いでいます。 

 アメリカはいうまでもなく、11の空母打撃群を持つ、まごうことなき世界一の海軍を持っているのです。 

 あと、どこの国が、苛烈な海戦を経て、そこから学んできたと言えるのか、歴史の年表を穴のあくほど見ても、それを伺い知ることはできないのです。
 
 私、自慢できることを一つ持っているのです。

 それは、イギリスはポーツマスに行って、あのネルソン提督のヴィクトリー、装甲艦ウォーリアを訪問したこと。
 さらに、アメリカはボストンの現役の帆船コンスティチューションもまた訪問したこと。
 そして、横須賀の三笠を訪れたこと。

 世界の三大海軍の、三大記念艦を訪問したことが、私の自慢なのです。
 そうそう、いないはずです。

 さて、高尚な趣味人たち、豊かな資金で、今度はどの船を見つけてくれるのか、心待ちにしているのです。

 できれば、ミッドウエイ沖あたりに多くの英霊と共に沈んでいる日本の機動部隊の空母四隻、とりわけ加賀が発見されればと思っているのです。
 なぜなら、海自が今、DDH 「かが」を運用しているからなのです。

 名を継ぐ艦船というのは、そこに何かロマンがあるものですから。

 私もどうやら、資金を除けば、高尚な趣味人と言えそうです。



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  世の中って
  理不尽なるもので
  満ち満ちているんだっ……



誰でも、社会的生活を営んでいれば、心苦しいことに出会うものです。
トップの解任、同僚との確執、職を辞しての新しき生活、そんなさまざまの体験がそれです。
人は、かくも争い、かくも世知辛い思いをするのです。
そして、大切なものをそこで失っていくのです。
失うことを、損得で測れることはできません。
失うことは、糧として、その人間に残れば、それでいいのです。
そして、若き人に、送ることができればそれでいいのです。


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