小さき庭で生けるものたち

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 蓮の葉の陰で
 外敵から襲われることのない
 安心を得て
 メダカがしきりに尾を
 動かしている世界が
 ここにあります




 我が宅の巨峰の若木が昨年に引き続き、いや、昨年をうわまって、葡萄房をつけつつあります。

 今年は畑をやるというので、ホームセンターで、牛糞入りの肥料を三袋も買って、そのうちの二袋六十キロを土に混ぜこんだのです。
 そのおりに、巨峰の根元にもたっぷりと牛糞をねじ込んだそのせいではないかと思っているんです。

 一本の木から伸びた枝の、そこからさらに伸びた新しい枝にそのたくましい房がぶら下がっています。
 数えてみますと、二十はくだりません。
 きっと、さらに房は大きく成長するのではないかと期待をしているのです。

 昨年は、そのぱんぱんに膨らんだ粒を美味しい美味しいと言いながら食べましたが、今年は、ひと瓶のワインができるのではないかと、取らぬ狸の皮算用をしているところなのです。

 そのぶどうの葉に、親指ほどもある芋虫が乗っていました。

 我が宅のウッドデッキ周辺は、揚羽や紋白、紋黄、時には、シジミの蝶の通り道になったいるのです。
 実際はどうだかわからないのです。

 でも、以前、勉強した日高敏隆の本で、そういうこともあることを知ったのです。
 私がウッドデッキで仕事をしていると、盛んに蝶が来るのです。以来、我が宅のウッドデッキは東から西へと蝶の道になっていると、私勝手に思っているんです。

 ですから、この芋虫も、その蝶の子孫に違いないと、そう思って、巨峰の葉の上にそのままにしておいたのです。

 数日後のことでした。
 その葉の下の踏み石の上に、その色あざやかな芋虫が体を丸めて、体液にまみれて転がっていたのを見つけました。
 きっと、鳥についばまれて落ちたに違いないと、そして、成虫になる前に息絶えたんだとそう思ったのです。

 これも自然の習わしだ、致し方がない。
 人間界と違って、彼らは、日々を命をかけて、生きているんだと、弔いの言葉にもならぬ言葉を心に宿したのです。

 そして、翌日、その体は蟻たちによって、踏み石から土の上に移動されているのを、私は発見するのです。
 そこは、蟻の巣に直結する穴のそばでした。
 蟻たちが、この芋虫の体液を、たんぱく質でできた皮膚を、今度は、自分たちの栄養にするために、せっせと噛み砕いては、巣の中にある倉庫に運んでいるようです。

 日高先生のように、私も、しゃがみこんで、その様子をじっと見ていたのです。
 生き物は、他人の命をこうして、自分の命を継ぐために使っている。生きとし生けるもの皆、そうしている。
 人間だって、そうだ。

 生き物の命を頂戴して、それを自らの命を支える栄養にしているんだ。

 蟻たちは、私が見ているのもお構いなく、せっせと芋虫をかじり、自分の身体の倍もあるその欠片を加えて、歩き回ります。
 実に働き者です。
 働くためだけに生きているというそんな感じです。他のことは一切考えない、自分に与えられた役目を、何の疑念も挟まずに遂行する。彼らは一切の不平も不満の言わないのですから、蟻の社会では、その支配者は楽だろうと、私はしゃがみながらそう思うのです。

 蝿が一匹、しゃがんでいる私のそばを飛び始めました。
 遠慮もなく、不躾にも、私の頬をさすってきます。失礼なやつだなって、私は顔を振ります。それでも、彼はやって来るのです。
 
 蟻は黙々と芋虫を運び、蝿はうるさく私の頰にやってきます。

 おや、そうか、この蝿、私の頬を食べ物と思っているんだ。おやつに頂いたせんべいのかすの匂いがこの辺りに漂って、それで、何か食べ物があるのだとそう思っているんだ。それとも、私のふっくらとした頬が、あの芋虫のように見えたのかもしれない。

 あっちは、蟻さまのもの、こっちは蝿さまのものとそんなことを考えていたのかもしれないのです。

 私は、右手をさっと動かし、そのうるさい蝿を追い払いました。
 ひょんなことで、私の手のひらがそのはえに当たってしまったようです。

 蝿は、乾いて白くなった踏み石の上に頼りなく落ちたのです。脳震盪でも起こしたに違いありません。

 すかさず、蟻が数匹、そこに近寄って行きました。そして、透明な羽を噛んだのです。
 飛ばないようにしているようです。

 そして、芋虫の次に、それを栄養にするようです。
 でも、芋虫はともかく、蝿など、食べるところがあるのかしらって、思うのです。

 小さな我が庭で、こうも激しい生存競争がなされているなんて……。

 考えれば、私だって、この世知辛い世の中で懸命に生きようとしているのですから……!



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プロフィール

nkgwhiro

Author:nkgwhiro
ご訪問
ありがとうございます

《10 / 5 💭 Saturday 》
 
🦅 昨日、<カクヨム>にて『虐待とトマト』を発信しました。

日常性の中に 
 時として 
 驚きの瞬間が

そんな新鮮な 他愛もない出来事



私たちの生活は、実に単純明瞭であり、そのありようにこそ、私たちは心の安らぎがあることを知るのです。
さらに加えていうなら、好き勝手に、ああでもない、こうでもないと、一所懸命に活動する方々を罵倒し、揶揄して、さらに幸福感を感じているのです。
それが名もなき、圧倒的多数の税金を納めて、主権を持ち、権利を主張する人々なのです。
そんなことを書くと、そんなことはない、それはk間違いだと唾を飛ばして、議論をふっかけてくる方もいるのではないかと、そうも思っているのです。

でも、今回のお話は、そんなけんか腰になるようなものではないのです。

私たちの日常生活の中の、他愛もない出来事、時に、ちょっと気がかりになるようなこと、腹が立つようなこと、意外なこと、そんなことに、実に新鮮さがあることを改めて知ること、そんな話なのです。


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