グラジオラスの花

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 皇帝の居住を指す未央と言う優雅な名を持ち
 垂れてもいないないのにヤナギの名も持ち
 なんとも不思議な花だと
 いつもその黄色い花を見て
 思っているのです





 我が宅の門の脇にいくつかの鉢を置き、ともすると無愛想になりがちな玄関を、花々、緑で飾っています。

 何もそれは、自分のためばかりではなく、通りを行き交う人々の心に潤いのひとかけらも与えることができればと、そう思っているからなのです。

 この季節は、二階のバルコニーの棚にも朝顔を咲かせています。
 クリスマスの頃は、そこに、イルミネーションを点灯させて、街に潤いを与えて、それが、この地に転居し、暮らさせてもらっている感謝の印として、私は、そうし続けているのです。

 今年、グラジオラスの球根を二月の頃合いにポットに植えて、それがやっと一株花を咲かせました。

 ピンクの大柄な豪華な花の束です。
 これから咲くであろうグラジオラスの花は一体何色だろうかと楽しみにしているのです。

 そのグラジオラスのポットを手入れしていましたら、たまに見かけるおばさんが夕方の散歩でやってきました。

 私の予想では、見事に咲いたグラジオラスを愛でてくれて、ひとしきり、その話をするというものでしたが、実は違ったのです。

 もう決まりましたかって。

 何が?って、そう思って、即座に、昨日、ここ何十年も会っていないいとこからいつもの電話があったことを思い出したのです。

 選挙だって。
 私、すっかり、興ざめしてしまったのです。

 教師をしていた時、ちょっとした役目をいただき、代表として、陳情のために議員会館に行ったことがあります。
 助成金の確保と、私学教育に関する理解と支援を、地元選出の政権与党議員に陳情をするのです。
 その年、日比谷の公会堂で全国決起集会に参加し、それが終わって、議員会館に向かいました。

 ところが、驚いたことに、議員会館の周囲に、多くの年配の方々が、ハチマキをし、時には、たすきをかけて、ビラを撒き、シュプレキコールをしていたのです。
 すっかりと、何に抗議をしていたのかは忘れていますが、印象に残っているのは、随分とお年を召された方たちが、大挙して、ここに集まっているんだなぁってことでした。

 ここ最近、そういえば、沖縄の一連の政治的混乱でも、ニュース映像に映る方々たち、随分とお年を召された方たちが多いと、私、気づくのです。

 随分と昔、御茶ノ水あたりで、機動隊と対峙して、ベトナム戦争に反対をしていたのは、実に、若い大学生たちでした。
 きっと、あの若者たちが、半世紀も立っても、信条を変えずに、権力に立ち向かっているに違いないって、そんなことを思っているのです。

 そんな一人であった私など、すっかりと、保守化して、信条のかけらもないのだから、今も、人生を投げ打って、政府に抗議する先輩たちに敬意を表さなくてはいけないと、あの時、彼らを横目て見ながら、議員会館に入った覚えがあるのです。

 選挙の季節になりますと、いろいろなデータが新聞に出てきます。

 その中で、特に、私の興味を引いたデータがありました。 
 若い世代とそうではない世代の政府支持への数値がまるきり逆になっているのです。
 二十代から四十代は概ね政府を支持し、六十代を中心に政府を支持しない層と、見事に分かれているのです。

 隔世の感があるとはこのことです。

 議員会館の周りに集っていた老人たちは、若い世代に、権力に批判的にならずして、若者と言えるのかと口角泡を飛ばさんばかりに、きっと言うのではないでしょうか。
 自分たちがそうであったように、そして、50年も信条を変えないことを誇りに、胸張って、そう言うに違いないと思っているのです。

 若い人たちはといえば、政府にとりたてて反発をしないのは、職もあり、さほど給料に不満もないし、国際政治でも苛立つこともない、だから、政府を野次ってどうなると、そんな思いでいるのです。

 でも、冷静になって現状を見れば、危険極まりない状況がそこにあることに気がつくのです。
 非政治的な若と政治的な老の分断です。

 グラジオラスの花を前に、いつもは穏やかに挨拶をしあうおばさんが、その日、私には、ハチマキをし、たすきをかけて、ビラを手にした、あの老人たちに重なったのでした。

 いとこにも言ったのです。
 いつも、こう言う時に電話をしてくれるんだけど、そうではない時の電話をくれれば、もっと、真剣に、あなたの話を聞くことができるんだけどねって。

 グラジオラスは、ラテン語で「小さなつるぎ」と言う意味だそうです。それは、グラジオラスの葉の形からきているといいます。
 その険しいつるぎを忘れさせるように、グラジオラスは、すくっと立ったその花茎にいくつもの花を咲かせるのです。
 ひとしきり、私はおばさんの話を聞き、そして、言いました。

 このピンクのグラジオラス、きれいでしょう。
 この花を見て、この道を通る人が幸せな気持ちになればって思っているんですよって。



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《7 / 23 🍙 Tuesday 》
 
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 ささやかなる宿なれど 
  そは我が生涯のある証 



 何世代にもわたって、その地に根を下ろすのもよし、たった一代、好き勝手に人生の一時期を過ごすのもまたよしとおもうのです。

 故郷とか、家というのは、実に、はかない、せつない、たよりないものであるのです。

 でも、こころのどこかに、人の思いを感じることのできるそんな場所でもあるのです。
 だから、人は、その狭い空間に、はかなさ、せつなさ、たよりなさのほかに、懐かしさを感じ、時空を超越した感情を託すことができるのです。
 
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