麦秋の候

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 ふと気がつくと

 いくぶん日の暮れるのが早まったかなって
 夕暮れの西の空を見て
 思ったのです




 あまりの暑さに辟易しているのは、何も私ばかりではないと思います。

 いつから、日本の夏はさほどに暑くなってしまったのかと思案をするのですが、あまりの暑さのため、私の思考は折れてしまうのです。

 子供の頃、夏になると、私は、九十九里の田舎の家でほぼ一ヶ月の間、過ごしていました。

 田舎のおばさんが、今日は暑いから帽子を被らなきゃダメとか、スイカをここに切っておくから、好きな時に食べなキャだめとか、あの頃は日射病と呼んでいた、夏の対策を口うるさいほど聞かされていたのです。

 きっと預かった子を日射病にさせまいと必死であったに違いありません。

 おばさんが今日は暑いと言う日、NHKの天気予報は30度を超えて、注意を喚起した日でした。せいぜい、高くても31度。35度とかましてや40度近くになることなどありませんでした。

 あの時代に比べれば、確かに日本の夏は、その様相を変えてきたのだと実感をするのです。

 にも関わらず、甲子園では、球児たちが、昔のまま、昔に倍する炎天下の中で、迫真のプレーを行うのですから、頭が下がります。
 給水タイムとか、テレビを見ていますと、何やら栄養になるものを口に入れている姿を見ますから、そう言う点では、改善もされているのでしょう。

 見事な木陰ができる我が宅のウッドデッキで午後遅い時間、くつろぐことを日課としています。

 エアコンの効いた部屋にいれば、ずっとそこに居続けてしまい、健康上良くないと、私の身体が外に出ることを要求するのです。
 そして、ミンミンゼミの声を聞きながら、私は、八月のオックスフォードの日々を思い出すのです。

 今年のヨーロッパは、イギリスも含めて、予想を超える暑さだったとか、そんな記事をSNSで目にします。
 しかし、私の記憶には、あの涼しい夏のオックスフォードがあるのです。

 午後のひととき、セントキャサリンズカレッジの入り口にあるホリウエル墓地を左手に見て、私は色とりどりの建物が並ぶセントクロスロードを南に進みます。
 そして、オックスフォードの街を貫くハイストリートに出たら、その大きな道を横断して、優雅なアパートメントが建つその横の小さな道、ローズレーンを進むのです。

 そして、リバーチャーウエル沿いの小道を私は気ままに散策をするのです。

 リバーチャーウエルの流れは、ほどなく、ロンドンにまで通じるテムズの流れに合流します。
 土手のない川、水の流れと小径がわずかな高低差でそこにあり、道の中程に大木があり、しかし、そんな道が私は好きであったのです。

 人が歩くのは、このような道でなくてはならぬと、しかし、災害の多い日本では、一度大雨が降れば川は氾濫します。
 ですから、これでもかっていうほどの土手を作り出すのです。
 樹木は道の端によせられ、極めて効率的な街道が作られてきました。
 江戸の昔から、早馬、飛脚のための道こそが道であったのです。

 人がのんびりと歩く道など、私たち日本人の中には想定さえなかったのです。

 リバーチャーウエル沿いの小道を歩いていますと、右手には、広大なクライストチャーチメドーが常に目に入ってきます。
 八月のオックスフォード、クライストチャーチメドーには、刈られた牧草が円筒形にしつらえられ、そこかしこに置かれています。

 そういえば、セントキャサリンズカレッジのバーでも、卒業生たちが集ってパイプを奏で、パーティをしていました。
 週末ごとに、人々は集い、ビールを手にして、音楽を聴き、会話を楽しんでいたのです。

 かっぷくのいい紳士が、私に声をかけてきました。

 日本ではボンダンスをする季節ですね。
 日本人は先祖を大切にする、あの暑い夏に、祭りをし、花火をあげて、墓に詣で、家族が集まりますねと。

 日本に暮らしたことのある紳士は、さらに、私に声をかけてきます。

 私たちにとって、八月は、収穫の季節なんです。
 麦を刈り取り、牧草を集め、それになにより、この気候です。
 これがうまいこと、うまいこととビールの杯を掲げます。

 そうか、イギリスの八月は、日本の十月に相当するんだって、今更の如くに思ったのです。

 一年の中で、とりわけ大切なラマスの祭りの日のそのイヴに、ジュリエット様はお生まれになり、今年は十四におなりあそばしますと、シェークスピアは『ロミオとジュリエット』の中で綴っています。

 十四の女は、もう、成熟した女、素晴らしい殿方を見つけ、幸せにならなければなりませんとそう言うのです。

 ラマスとは、豊かな収穫を祝う祭りを意味します。
 イギリスでは、形を変えて、今でも昔ながらの行事を行っているんだと気がつくのです。

 それにしても、日本のこの暑さ、昔ながらの祭り、行事が維持できるかしらって、私、ウッドデッキの木陰で、遠くから聞こえてくる祭囃子の音に耳をすませていたのです。



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《8 / 18 💦 Sunday 》
 
🦅 昨日、<カクヨム>にて『まぼろしのフランクフルト中央駅』を発信しました。

 縦横無尽に 

 意識の中を駆け巡るのは 
 人の持つ感性なるもの



この世に、二つの世界があり。
それは、現実世界と仮想世界。

かつては、そんなバカなと思える仮想の世界が、詩になり、絵になり、物語になって、現実世界で堪能されていました。
今、 AIがその仮想世界を現実世界に組み込み、私たちはその境目さえも不明の中で、仮想世界で遊ぶことができるのです。

なんともややこしい時代になったものです。

しかし、仮想の世界、昔から、人間の中にある何かのスイッチに刺激を与えてきました。
想像というスイッチ、さらに進んで、創造というスイッチにも、時には、幻想に、あるいは空想のスイッチとなり、私たちを楽しませてくれたりもしているのです。

フランクフルトの革ジャン男も、我が庭の山法師の木も、そして、日本語の二人称も、すべて、私にとって、現実世界と仮想世界を行き来する契機となったものたちなのです。

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